あなたは医師ですか。
子宮体がんは早期発見がカギ:かかりつけ医を持って、気になる症状がすぐに相談を -アストラゼネカ社がセミナーを開催-
[公開日] 2024.12.19[最終更新日] 2024.12.17
12月13日、アストラゼネカ株式会社主催の「子宮体がんの早期治療へ向けて:見過ごされがちな不正出血、スルーしないために知るべきこと」と題したセミナーが開催された。
冒頭に岡本愛光先生(東京慈恵会医科大学 産婦人科学講座 主任教授)は、婦人科がん(子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん)のそれぞれの特徴や診断・治療について説明した。子宮体がんは比較的予後が良く、死亡率は低いという特徴がある。また全ての婦人科がんに共通して、I期の発見が多い特徴があるものの、特に子宮体がんでは、I期が約72%を占めており、岡本先生は早期に発見することで克服できる可能性が高まる、と強調した。
また西川忠曉先生(東京慈恵会医科大学 産婦人科学講座 講師/診療医長)は、子宮体がんの罹患数が年々増加傾向であることを指摘。その背景には、知名度が低いこと、検診の意義が確立されていないこと、予防法がないことに加え、女性のライフスタイル(食生活、出産経験)の変化がある、とコメントした。また、I/II期子宮体がんの5年生存率は9割前後である一方で、病期が進行することで生存率が大きく低下し、Ⅳ期の5年生存率は2割という現実がある。そのため、気になる症状があった場合には早めの受診を、と呼び掛けた。
同セミナーでは、アストラゼネカ社から、子宮体がんと診断された経験のある190人を対象とした患者調査の結果が報告された。
まず、婦人科への受診および定期健診の受診に関しては、診断前に婦人科の受診経験があった患者さんは75%、そのうち婦人科の定期検診を受けていた方は58%(50-60代以上では61%、40代以下においては41%)であった。
また、乳がん検診と比較して、婦人科がんの検査の方を毎年受けていると回答した割合が高い傾向を示したが、その中でも子宮体がんの検査である子宮内膜細胞診を受けていると回答した割合は34%と婦人科がんの検査の中で最も低い結果であった。
医療機関を受診したきっかけは「気になる症状があったから」(76%)との回答が最も多く、具体的な症状として93%が「不正出血」と回答した。
異常を感じてから婦人科を受診するまでの期間については、37%が「0~2週間」と回答した一方で、51%の患者さんは1カ月以上かかったと回答した。受診するまでに時間がかかった理由としては、「不正出血などの症状が子宮体がんと結びつかなかったため受診の必要性を感じなかった」と回答した割合が55%で最も高かった。
診断前に子宮体がんへの理解に関しては、初期症状、好発年齢、罹患しやすい人、発症リスクの4項目それぞれにおいて、7割前後が「全然知らなかった」と回答。また、診断前に知っていたら良かったと思う知識は「子宮体がんの初期症状」の割合が62%で最も高く、診断前により多くの知識を持っていたとしたら、「もっと早い受診につながる」と61%が回答した。
また、リンチ症候群に関しても、85%の患者さんが「全く知らなかった」と回答した。
この結果を受けてアストラゼネカ社は、子宮体がんの認知度が低いことについて、患者さんが子宮体がんへの理解を深める機会が少ないことを指摘。新たに疾患情報サイトを立ち上げ、今後子宮体がんをはじめとする婦人科がんの病気や治療への理解を深め、早期受診・早期発見につなげてほしい、と呼び掛けた。
続くトークセッションでは、子宮体がんを経験された藤あや子さん(歌手)が登場した。最初に異型細胞増殖症との診断を受け、がんへの移行リスクについて説明を受けたものの、まさか自分ががんになるはずない、という想いが強かったと藤さん。しかし、その後の検査で一部ががん化していると宣告を受けた瞬間、悪いものはすぐに取ろう、とすぐに気持ちの切り替えができ、その場で手術を受ける決断ができた、と当時を振り返った。
これに対して岡本先生は、早期診断・早期治療にポジティブに取り組めている患者さんほど、日常生活に復帰できるスピードも速いという印象を持っている、とコメント。最近は、手術と言っても必ずしも開腹が必要なわけではなく、腹腔鏡が普及しており、更にロボット支援も今後期待が持てる技術である。岡本先生は、低侵襲かつ少ない入院日数での手術が可能になってきており、手術のハードルが下がってきている、と話した。
手術後の心境に関して藤さんは、「悪いものをとった瞬間から、なくなってうれしい、というプラスの感情が大きかったです。腰痛などのその他の不調も回復していきました。我慢せずに自分の体と向き合って、早く治療をし、早く元の生活に戻ってほしいです」と呼び掛けた。
藤さんの子宮体がんの発見は、毎年受けていた検診がきっかけではなかったという。「仕事で出張していた約3週間、なかなか出血が止まらないことを夫に相談したところ、早く病院へ行くべきだということで予約を入れてくれました。仕事から戻って即病院に行き検査してもらいまして、これはちょっと怪しいということになりまして」と発見当時を振り返り、家族の後押しが受診につながったと話した。「家族に話すことも検査に行くことも、勇気がいることだと思いますが、命が係わることなので、おかしいなと思ったときには1日も早く検査・治療していただくことが、私のように元気に普段の生活に戻れることにつながると強く訴えたいです」(藤さん)
また藤さんは、長期にわたる不正出血が起きる以前にも腰痛や軽い不正出血があったものの、年齢的なものかなとの考えがあり、がんとは結び付かなかった、と話す。
これに対して西川先生は、医療者にとって常識と感じている不正出血と子宮体がんの紐づけが、一般的にはまだまだ進んでいないことが今後の課題であることを指摘。特に閉経前後の生理の乱れと、不正出血の区別が難しく、違和感があったときにためらわずに受診できる土台を整えていくことが重要ではないか、と語った。
早期発見に向けてできることとして岡本先生は、子宮頸がんの検査のときに超音波検査を追加で受診することを例に挙げた。「子宮頸がん検査は無料で検査ができるにもかかわらず、日本の受診率は4割にとどまっていることが問題です。まず子宮頸がん検査を受けていただいて、そのときに超音波検査を一緒に受けることで、卵巣がんと子宮体がんの早期発見につながる可能性があります。超音波検査は自己負担ですが、優れた検査法なので、ぜひ受けてほしいです」(岡本先生)
また、将来自分で検査できるキットが開発されることで、検査のハードルが下がるのではないか、と岡本先生。自身も15年前から研究を続けているがなかなか難しい、としつつ、必ずそういう時代が来ると思っている、と将来展望を語った。
最後に、子宮体がんは認知度が低く予防ができない疾患であるが、女性のライフスタイルの変化に伴う罹患率の増加と向き合っていかなければならない、と西川先生。ぜひかかりつけ医を持ってほしいと呼び掛けた。また岡本先生も、早期に治療をすれば予後が良い疾患なので、かかりつけ医を持ってすぐに相談してほしい、と改めてかかりつけ医の重要性を訴えた。これに対し藤さんも、20年以上付き合いのあるかかりつけ医がいるとし、かりつけ医は安心感を持てる重要な存在だ、とコメントした。
セッションの最後に藤さんは、「自分が病気にかからなかったら、子宮体がんを知ることがなかったと思いますが、今日お話を伺って改めて、自分は早期に発見できたからこそ元気でいられるんだと気づきました。日本の女性が、中から若く美しく元気であってほしいなと思っています。そのためにもぜひ検診をよろしくお願いします」と想いを語った。
ニュース
子宮体がん
治験・臨床試験
一覧を見る
リサーチ・調査
一覧を見る
ニュース
一覧を見る
イベント
一覧を見る
患者会
一覧を見る
ログインいただくと特定のがん種の最新情報をお知らせしたり、チャットでご相談していただけるようになります。