この記事の3つのポイント
・局所進行性上咽頭がんを対象とした第2相試験
・術前および術後療法としての抗PD-1抗体トリパリマブの有効性・安全性を検討
・術前および術後療法としてのトリパリマブ+化学放射線療法と術後療法としてのトリパリマブは、無増悪生存期間を有意に延長
2024年11月7日、医学誌『The Lancet Oncology』にて、局所進行性上咽頭がんに対する術前および術後療法としての抗PD-1抗体薬阻害薬であるトリパリマブ療法の有効性、安全性を検証した第2相試験(NCT03925090)の結果がSun Yat-sen University Cancer CenterのSai-Lan Liu氏らにより公表された。
本試験は、局所進行性上咽頭がん患者(N=150人)に対して、術前療法として2週を1サイクルとしたトリパリマブ240㎎単剤を2サイクル投与し、その後、強度変調放射線療法+シスプラチン併用療法を実施、続いて術後療法として3週を1サイクルとしたトリパリマブ240㎎単剤を最大8サイクル投与する群(N=100人)、もしくは術前療法として2週を1サイクルとしたプラセボ療法を2サイクル実施し、その後、強度変調放射線療法+シスプラチン併用療法を実施し、術後療法として3週を1サイクルとしたプラセボ単剤を最大8サイクル投与する群(N=50人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として2年間無増悪生存率を検証したランダム化、単施設、二重盲検、プラセボ対照の第2相試験である。
本試験の結果、主要評価項目である2年無増悪生存率は、トリパリマブ群の92.0%(95%信頼区間:86.7%–97.3%)に対してプラセボ群で74.0%(95%信頼区間:61.8%–86.2%)と、トリパリマブ群で病勢進行または死亡のリスクを60%(HR:0.40,95%信頼区間:0.18–0.89,P=0.019)改善した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の急性の有害事象(無作為化後1年以内に発生)は、白血球減少症がトリパリマブ群の40%に対してプラセボ群で44%、粘膜炎が28%に対して20%、好中球減少症が17%に対して18%、貧血が16%に対して10%、体重減少が12%に対して12%を示した。グレード3以上の晩期の有害事象(無作為化後1年以降に発生)は聴力低下で、いずれの群においても8%であった。トリパリマブ群における重篤な免疫関連有害事象発症率は10%、治療関連有害事象による死亡例は確認されなかった。
以上の結果からSai-Lan Liu氏らは「局所進行性上咽頭がんに対するトリパリマブと同時化学放射線療法を組み合わせた周術期療法は、非常に有望な治療である可能性が示唆されました」と結論付けた。
参照元:
Neoadjuvant and adjuvant toripalimab for locoregionally advanced nasopharyngeal carcinoma: a randomised, single-centre, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial(The Lancet Oncology 2024 DOI: 10.1016/S1470-2045(24)00504-7)あなたは医師ですか。