• 検索
  • 相談
  • お知らせ
  • メニュー
  • がん種
  • 特集
  • 治験
  • リサーチ
  • イベント
  • 体験談
  • 患者会
  • 辞典
  • お役立ち

治療以外の時間を充実させるために:医師と患者の両方の立場から考える~J&Jがセミナーを開催~

[公開日] 2024.11.18[最終更新日] 2024.11.18

目次

Johnson & Johnson(ヤンセンファーマ株式会社)は11月15日、「“治療も、やりたいことも諦めない”ための鍵とは」と題したセミナーを開催した日本赤十字社医療センター血液内科副部長の塚田信弘先生、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授で多発性骨髄腫経験者の岸博幸氏が登壇した。

「多発性骨髄腫の治療を諦めず、前向きに続けるために」塚田信弘先生

多発性骨髄腫は、血液の細胞、特に抗体産生に重要な「形質細胞」ががん化する病気である。抗体の代わりにMタンパクと呼ばれる不要なタンパク質が大量に産生され、骨が壊されていく。 多発性骨髄腫の前段階として、カルシウムが高くなる(C)、腎臓機能が落ちる(R)、貧血が起きる(A)、骨が弱くなる(B)というCRAB症状が見られる。後天的な染色体異常や遺伝子変異が原因であり、60歳以上の高齢症例に多く見られる。 多発性骨髄腫に起こりやすい懸念すべき症状として、フレイル(筋力を含む心身の活動が低下した状態)がある。多発性骨髄腫の特徴として、高齢であることに加え、貧血や骨折、腎機能障害が起きやすいこと、更に治療により体力が低下することなどが原因として考えられる。そのため、治療中の体力・筋力の維持は大切であり、筋力低下を防ぐ意味でもできるだけ長期入院は避けるべきとされている。 治療法としては、化学療法に加え、免疫調整薬や抗体薬(二重特異性抗体含む)、またCAR-T細胞療法などがあり、治療薬の開発は確実に進んでいる。「今もまだ完治できますとは言えない病気ではありますが、治療はこの数年間でも大きく進歩してきたので、自身の患者さんには『一緒に完治を目指しましょう』と説明できる時代になってきました」(塚田) また、骨髄細胞を使った微小残存病変(MRD)検査において陰性となることが、予後良好となるひとつの指標ということがわかってきており、MRDの陰性の維持がひとつの治療目標となってきている。 塚田先生は治療を前向きに継続するためのコツとして、「自身の病気をよく知ること」、「担当医と信頼関係を築くこと」、「治療中に困ったことは我慢せずに聞くこと」、「治療以外の時間を有意義に過ごすこと」の4つを挙げた。 そして、自身が患者さんと対峙するときに気を付けていることとして、「初期治療が最も重要であると伝えること」、「治療目標とそのための治療プランや治療成績の見通しを提示すること」、「難治性の場合の予後についても早めにはっきりと伝えること」を挙げ、特に信頼関係の構築において治療目標の共有の重要性を強調した。 ガイドライン通りの治療が最適とは限らない、と塚田先生。「患者さんの生活や価値観に合わせて一緒に治療法を考えることで、医師も患者も後悔しない治療選択を心がけることが大切です(=シェアード・ディシジョンメイキング(SDM))」(塚田)

「治療も、やりたいことも諦めない生き方」 岸博幸氏

岸氏は、2023年1月に多発性骨髄腫と診断され、自家移植を受けた後、現在は月1回の通院による点滴と毎日の薬の服用を続けている。今は治療をしながら仕事もこなし、多忙な日々を送っている。 率直に言って思ったよりしんどい、と岸氏。「ロッククライミングや格闘技をやっていたため、体力には自信がありましたし、だからこそ強い治療にも耐えられたと思ってきました。でも最近は、仕事ですぐに疲れたり、回復に時間がかかったりと、体力の衰えを感じることが多くなりました」(岸氏) 岸氏は、もうひとつ苦労していることとして、治療にたくさんのお金がかかる点を挙げた。平均的な収入がある方であっても大変な出費なのではないか、とし、治療費が払えなくなることで、治療選択に制限が出てくることへの懸念を示した。 治療を続けながら自身がやりたいことを全部やることは、簡単ではないのが現実、と岸氏は言う。副作用により活動の幅が狭くなったり、やりたいことに制限がかかることもあるようだ。「自身も決して毎日がいい感じではないんですよ。(でも)自身の好きなことと体調のバランスを自分で実験をしながら楽しく過ごせば、病気と共存できるようになっていくのではないかと思っています」(岸氏) そして最後に岸氏は、自身がやりたいことに前向きに取り組めている背景として、何よりも周囲の理解に恵まれていることを強調。自身の立場を活かして、病気の患者さんがやりたいことをできるだけ実現するために社会としてどう向き合っていくか、という問題提起を発信し続けてきたい、と意気込みを語り講演を締めた。

治療・治療外の活動を前向きに続けるために必要なこと(パネルディスカッションより)

セミナー後半には、ヤンセンファーマが今年の6月に実施したインターネット調査の結果をもとに、パネルディスカッションが行われた。同調査の対象は、多発性骨髄腫と診断され、薬物治療を受けた経験のある患者さん30人と、血液内科または血液腫瘍内科に所属し多発性骨髄腫を診療する医師119人であった。 調査によると、80%の患者さんは、「基本的に薬による治療は、落ち着いた状態を維持するために長く続けるものである」と回答。一方で、53%が「多発性骨髄腫に対する治療により、症状が軽快した状況で、お薬の治療を休みたいと思ったことがある」と回答した。その理由として、副作用に続き、「通院などが負担」(37.5%、6/16)、「費用が負担」(37.5%、6/16)、「精神的な負担」(31.3%、5/16)という回答が上位を占めた。ただし、実際には全体の8割強が治療を休まず継続していた。 これに対して塚田先生は、休薬は患者さんの意思だけでは決められない、とし、治療で目指すものを事前に明確に提案することで前向きに治療を継続でき、それが実現したときに休薬の提案ができる場合もある、と自身の経験を語った。 患者の立場である岸氏は、「体力の低下や月2回の注射の副作用が大きく、仕事をする体調が削られてしまうときには、治療をさぼりたいなと思うことは正直あります」としつつも、家族の存在や元気になることへの願望から、治療を継続できている、と話した。 アンケート結果では、前向きに治療を続けるために必要なこととして、医師も患者さんも共通して「主治医からの十分な説明」、「不安や疑問を医師に相談できること」、「病気や治療や医療制度についての情報を得ること」の3つの回答が上位となった。また医師からの回答では、「身近でお世話をしてくれる人に不安や疑問などを相談できること」も上位に挙がった。 塚田先生は、家族のように付き添ってくれる人がそばにいることで、治療に前向きになれるだけでなく、副作用の早期発見にもつながる、と身近な相談者がいることのメリットを挙げた。また、家族だけでなく、院内でも看護師や薬剤師に悩みや疑問を打ち明けてほしい、と呼び掛けた。 岸氏は、通院時には病院に半日以上滞在することから、看護師さんと仲良くなり、たくさんのアドバイスや応援をもらっている、と自身の経験を語った。 ディスカッションでは、医療費の高騰も話題となった。岸氏は、国の保険システムだけでは限界がある、として、「民間の保険の仕組みも取り入れたシステム設計が必要になる」と私見を述べた。「治療の進歩が国民に平等に還元されるためには、特に中低所得者が高度医療を受けられることへの支援とどうしていくかが課題です。そのために、政府の保険制度と民間の保険制度を組み合わせた仕組みつくりが必要だと思っています」(岸氏)

治療以外の活動を大切にすることの意義

最後に、治療以外の活動に関して、「仕事が好きなので、治療以外のほとんどの時間は仕事をしている」と岸氏。ただし、基礎体力をアップすることが前提であることを強調し、自身もランニングと筋力トレーニングをやることで、治療によって奪われた体力を回復させていること、またそれが達成感や前向きな気持ちのきっかけにもなることを述べた。 これに対して、「筋力は貯金である」と塚田先生。治療前も治療中も、できるだけ貯金を減らさないようにトレーニングを続けることの重要性を改めて説明した。
ニュース 多発性骨髄腫

浅野理沙

東京大学薬学部→東京大学大学院薬学系研究科(修士)→京都大学大学院医学研究科(博士)→ポスドクを経て、製薬企業のメディカルに転職。2022年7月からオンコロに参加。医科学博士。オンコロジーをメインに、取材・コンテンツ作成を担当。

治験・臨床試験

一覧を見る

リサーチ・調査

一覧を見る

ニュース

一覧を見る

イベント

一覧を見る

患者会

一覧を見る