国立がん研究センター東病院は9月17日、SCRUM-Japan GOZILAプロジェクトに参加した4,037名の患者さんを対象に、血液を使ったリキッドバイオプシー検査に基づく個別化治療の効果を調査した結果を発表した。
SCRUM-Japanは、2013年に開始した肺がん患者さんが対象のLC-SCRUM-Japan(現:LC-SCRUM-Asia)と、2014年に開始した消化器がん患者さんが対象のGI-SCREEN-Japan(現:MONSTAR-SCREEN)が統合した産学連携がんゲノムスクリーニングプロジェクト。2018年からSCRUM-Japan MONSTAR-SCREENプロジェクトの一部として開始し、リキッドバイオプシーを用いた包括的がんゲノムプロファイリングを実施している。
今回の研究ではまず、得られた血液サンプルを使ってがんに関連する74個の遺伝子を分析し、その結果に基づいた最適な標準治療を選択。これにより参加者の24%が自身に適合した標準治療を受けることができ、リキッドバイオプシーによって従来の方法では見つけられなかった治療の選択肢を提供できる可能性が示された。
また、リキッドバイオプシーに基づいた標準治療を受けた患者さんの生存期間は、適合する治療を受けなかった患者さんと比較して、約2倍長くなることが明らかとなった(生存期間中央値:18.6か月 vs 9.9か月)。これは、リキッドバイオプシーを用いた個別化治療が、患者さんの生存期間を大幅に延ばす可能性があることを示唆している。なお、治療につながるバイオマーカーが検出されなかった患者さんに関しては、治療抵抗性に関与する遺伝子異常などを有しておらず、その結果、バイオマーカーに適合する治療を受けなかった患者さんと比較して良好な予後につながったと予想された(生存期間中央値:16.8か月)。
更に、バイオマーカーの特性を詳しく調べた結果、遺伝子変異を持つ細胞ががん細胞全体に占める割合や、遺伝子の血漿コピー数を血液中のがん細胞由来DNA量で補正した値が高い症例ほど、治療効果がより高いことがわかった(これらの値が高いほど、均一性の高いがんであるという特徴を持つ)。
以上の結果は、リキッドバイオプシーを使ったがん個別化治療の有効性を示すものである。リキッドバイオプシーは、検査コストや結果の解釈など克服すべき課題もあるが、今後のがん治療の進歩に大きく貢献することが期待される。
なお、同研究成果は、2024年9月16日付で海外雑誌「Nature Medicine」誌に掲載されている。
参照元:
国立がんセンター プレスリリース
あなたは医師ですか。