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日本人がん患者由来組織移植モデルを使った新しい創薬開発の基盤に期待:標的タンパク質分解誘導薬の非臨床試験から医師主導治験開始までを実現

[公開日] 2024.09.18[最終更新日] 2024.09.18

9月11日、国立がん研究センターは「標的タンパク質分解誘導薬E7820の腫瘍縮小効果をJ-PDX(日本人がん患者由来組織移植モデル)で確認し、医師主導治験を開始」と題した記者会見を開催した。 冒頭に間野博行先生(国立がん研究センター研究所長)は、今回の成果は新しい創薬開発プラットフォームが誕生したことに意義があり、今後日本独自の創薬開発を進めることで、ドラッグラグ・ロスの克服に大きく貢献することが期待される、と強調した。 また、大和隆志氏(エーザイ株式会社常務執行役)は、今回の研究は日本の創薬における産官学の連携の賜物であること、開発に至った薬剤はモレキュラーグルー(分子糊:従来結合することがないタンパク質同士を近接させ、生理活性を誘導する)という今後注目されていくであろう新しいモダリティの薬剤であること、そしてこれから重要視されることが予想されるmRNAスプライシング(mRNA前駆体から成熟mRNAを産生する、遺伝子発現に必須の機構)を標的としていること、そして同薬剤の開発に、世界に先駆けて日本の医師主導研究としてチャレンジすること等、今回の開発に多くの画期的要素が含まれていることを説明。昨今懸念されている日本の創薬に関する前向きな話題として、今回の取り組みを広く知ってほしいと語った。 今回の研究には、国立がん研究センターとエーザイが、新規抗がん剤開発を加速させる創薬研究システムの確立をめざし、日本医療研究開発機構(AMED)の支援により、「希少がんならびに難治性がんに対する抗がん剤治療開発を加速させる創薬研究手法に関する研究」を進めてきた背景がある。 同研究で開発が進められている標的タンパク質分解誘導薬E7820は、スプライシング因子RBM39とタンパク質分解に関わるDCAF15を結合させる分子糊としての作用を持ち、RBM39を選択的に分解する新しいタイプの薬剤。PDXモデル(patient-derived xenograft:がん患者さんの腫瘍組織を免疫不全マウスに直接移植することによって作成するがんモデルの一つ)を使ったがん種横断的な薬効評価のスクリーニングを実施し、特に胆道がん(58.3%)や子宮体がん(56.6%)で高い効果が認められた。従来の細胞株による実験モデルと比較して、がん患者さんの組織を使ったPDXモデルは、患者さんのがん細胞の特徴が反映されるため、胆道がんと子宮体がんにおけるE7820の臨床効果が示唆された。 続いてE7820のバイオマーカー探索をした結果、BRCA1、BRCA2、ATM等の相同組換え修復に関連する遺伝子に変異があり、相同組み換えができない細胞において、特に効果が高いことが明らかとなった。続く分子細胞学的解析により、E7820が相同組換え修復欠損 (HRD)陽性細胞に対して特異的な効果を示す機序は、次のように考えられる。まずE7820がもたらすスプライシング異常によって、DNA損傷の修復に関連する遺伝子の発現が低下→DNA損傷修復の機能低下が低下し、二本鎖切断DNAが修復されないまま蓄積→二本鎖切断は通常相同組み換えによって修復されるが、HRD陽性のがん細胞では相同組み換えがうまくできずに損傷DNAを修復できず、細胞死が誘導される。 同結果から、今回効果が認められた胆道がんや子宮体がん以外にも、相同組み換え関連遺伝子の変異のある患者さんにおいて、他のがんにおける効果も期待できる可能性がある(間野先生)。 なお、同研究結果は2024年5月24日付で海外雑誌「npj Precision Oncology」に掲載されている。 以上の結果をもとに、国立がん研究センター中央病院および東病院では、固形がんに対するE7820の日本人における安全性および有効性を評価する第1相医師主導治験を開始。同試験は、E7820の忍容性および推奨用法・用量を決定するパートと、胆道がん・子宮体がん・相同組み換え遺伝子変異を有する固形がんを対象に安全性・有効性を評価する拡大パートから成る。国立がん研究センターとエーザイは、将来的に特定のがん種やバイオマーカーを有する固形がんに対する有効性を確認する第2相、さらには承認申請用試験の実施を検討し、薬事承認を目指していくという。 更に、同研究において国立がん研究センターが構築した日本人がん患者由来の大規模PDXライブラリー「J-PDX」は、臓器横断的かつ希少がんやアジアに多いがんにも注力していること、手術検体だけでなく薬剤耐性期の検体由来のPDXも樹立したこと、治療歴や予後などの患者さんの詳細な臨床情報と紐づいたPDXであることが特徴で、新規抗がん剤開発での活用促進、開発の加速につながることが期待される。 参照元:
国立がん研究センター プレスリリース
ニュース 固形がん E7820

浅野理沙

東京大学薬学部→東京大学大学院薬学系研究科(修士)→京都大学大学院医学研究科(博士)→ポスドクを経て、製薬企業のメディカルに転職。2022年7月からオンコロに参加。医科学博士。オンコロジーをメインに、取材・コンテンツ作成を担当。

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