この記事の3つのポイント
・早期乳がんを対象としたメタ解析
・周術期における化学療法+免疫チェックポイント阻害剤の有効性・安全性を検討
・トリプルネガティブ乳がんおよびホルモン受容体陽性/HER2陰性乳がんにおける術前療法としての有効性を認める
2024年8月29日、医学誌『JAMA Oncology』にて、早期乳がんに対する術前療法として化学療法+免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の有効性、安全性を比較検証したメタ解析の結果がSOLTI Cancer Research GroupのGuillermo Villacampa氏らにより公表された。
本試験は、2023年10月時点でPubmedで登録された早期乳がんに対する術前療法としての化学療法+ICIの有効性、安全性を比較検証したランダム化比較試験(RCT)を対象にして、病理学的寛解率(pCR)、無イベント生存期間(EFS)、有害事象発症率を検証した報告である。
解析対象は、9つのランダム化比較試験(RCT)に登録された5,114人の早期乳がんであり、そのうちトリプルネガティブ乳がんが2,097人、ホルモン受容体陽性/HER2陰性乳がんが1,924人、HER2陽性乳がんが1,115人である。
本試験の結果、pCRに関しては、トリプルネガティブ乳がんではPD-L1ステータスに関係なくICIの追加の効果が認められ、ホルモン受容体陽性/HER2陰性乳がんではPD-L1陽性群のみで効果が認められたが、HER2陽性乳がんではICIの追加の効果は認められなかった。
pCRを達成したトリプルネガティブ乳がんにおけるEFSは、ICIの追加投与により改善傾向を示し(HR:0.65,95%信頼区間:0.42-1.00)、5年無イベント生存率はICI追加投与群で92.0%、ICI非投与群で88.0%を示した。また、残存病変を有する(pCRが得られていない)場合でも、ICI投与群の方がEFSが良好であり(ハザード比0.77、95% CI 0.61~0.98)、ICI追加投与群では5年無イベント生存率が63.3%、ICI非投与群では56.1%となった。一方、術後ICIでは、pCRまたは残存病変を有する患者のいずれにおいても、生存率の数値的な改善は見られなかった。
一方の安全性として、グレード3以上の免疫関連有害事象発症率は10.3%を示した。
以上のメタアナリシスの結果よりGuillermo Villacampa氏らは”早期乳癌患者に対する術前療法としての化学療法+ICIは、トリプルネガティブ乳がんおよびホルモン受容体陽性/HER2陰性乳がんに対して良好な抗腫瘍効果を示し、安全性プロファイルも問題ありませんでしたが、術後ICIによる利点は認められませんでした”と結論付けた。
参照元:・周術期における化学療法+免疫チェックポイント阻害剤の有効性・安全性を検討
・トリプルネガティブ乳がんおよびホルモン受容体陽性/HER2陰性乳がんにおける術前療法としての有効性を認める
Neoadjuvant Immune Checkpoint Inhibitors Plus Chemotherapy in Early Breast Cancer(JAMA Oncology 2024 doi:10.1001/jamaoncol.2024.3456)