この記事の3つのポイント
・第1/2世代チロシンキナーゼ阻害薬により増悪した脳転移を有するEGFR変異陽性の非小細胞肺がん第2相試験
・第3世代チロシンキナーゼ阻害薬であるラザルチニブ単剤療法の有効性・安全性を検討
・T790Mの変異の有無にかかわらず有効な可能性
2024年8月15日、医学誌『JAMA Oncology』にて第1/2世代チロシンキナーゼ阻害薬治療後に病勢進行した脳転移のあるEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する第3世代チロシンキナーゼ阻害薬であるラゼルチニブ単剤療法の有効性・安全性を検証した第2相試験(NCT05326425)の結果がYonsei Cancer CenterのMin Hee Hong氏らにより公表された。
本試験は、第1/2世代チロシンキナーゼ阻害薬治療後に病勢進行した脳転移のあるEGFR遺伝子変異陽性のNSCLC患者に対して、1日1回ラゼルチニブ240mg単剤を投与し、主要評価項目として頭蓋内奏効率(iORR)、副次評価項目として頭蓋内無増悪生存期間(iPFS)、奏効持続期間(DOR)、全生存期間(OS)、病勢コントロール率(DCR)等を検証した多施設共同シングルアームの第2相試験である。
本試験に登録された40人の患者背景は、性別が女性63%(N=25人)、年齢中央値が63歳(29-85歳)であった。
追跡期間中央値13.6ヶ月時点において、主要評価項目である評価可能集団のiORRは55%であり、T790M変異陽性例のiORRは80%(95%信頼区間:38.3%-71.4%,N=21/38人)、T790M変異陰性例のiORRは43%(95%信頼区間:28.4%-99.5%,N=4/5人)、T790M変異ステータス不明例のiORRは67%(95%信頼区間:34.9%-90.1%,N=8/12人)を示した。
副次評価項目であるiPFS中央値は15.8ヶ月(95%信頼区間:15.2ヶ月-未到達)、T790M変異陽性例のiPFS中央値は15.2ヶ月(95%信頼区間:4.2ヶ月-未到達)、T790M変異陰性例のiPFS中央値は15.4ヶ月(95%信頼区間:7.9ヶ月-未到達)、T790M遺伝子変異ステータス不明例のiPFS中央値は18.0ヶ月(95%信頼区間:3.9ヶ月-未到達)を示した。
ラゼルチニブの脳への移行率は46.2% (95%信頼区間:10.0-49.6) であり、頭蓋内奏効のメカニズムを裏付ける結果であった。
安全性に関しては、大部分の有害事象はグレード1または2であった。
以上の第2相試験の結果よりMin Hee Hong氏らは、「第1/2世代チロシンキナーゼ阻害薬治療後に 脳転移が進行したEGFR変異陽性NSCLC患者に対して、脳局所治療の代わりにラゼルチニブを使用することが有望な戦略となり得ることを示唆しています」と結論付けた。
参照元:・第3世代チロシンキナーゼ阻害薬であるラザルチニブ単剤療法の有効性・安全性を検討
・T790Mの変異の有無にかかわらず有効な可能性
Lazertinib in EGFR-Variant Non–Small Cell Lung Cancer With CNS Failure to Prior EGFR Tyrosine Kinase Inhibitors(JAMA Oncol. 2025 doi:10.1001/jamaoncol.2024.2640)