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切除可能な進行食道がんに対する術前DCF療法のエビデンスを日本から発信:英国学術雑誌への掲載を機に海外へのインパクトにも期待

[公開日] 2024.07.01[最終更新日] 2024.07.01

6月27日、国立がん研究センターは「切除可能な進行食道がんへの術前DCF療法が新たな標準治療へ~「The Lancet」に掲載され海外の診療ガイドラインへ一石を投じ世界的な食道がん治療の潮流を変えるターニングポイントとなる~」と題した記者会見を開催した。 食道がんの治療は、従来日本においては術前CF療法(シスプラチン+5-FU)が標準とされてきたが、依然として予後不良であることから、より強力な術前治療の開発が望まれていた。 そこで日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)では、治療成績向上の方法として、局所治療(放射線療法)と全身治療(抗がん剤)のどちらを強化すべきか、という臨床的疑問に答えることを目的としたランダム化第3相試験を実施。切除可能な進行食道がん患者さんを対象に、術前CF療法に対する、3剤併用術前化学療法(ドセタキセル+CF療法:DCF療法))と、術前化学放射線療法(シスプラチン+5-FU+放射線療法41.4Gy(CF+RT療法))の優越性を検討した。 主要評価項目である生存期間中央値は、CF療法群が5.6年、DCF療法群が未到達、CF+RT療法群が7.0年であり、DCF療法群はCF療法群に対して有意に生存期間を改善した(ハザード比=0.68、95%信頼区間:0.50-0.92、p=0.006])が、一方のCF+RT療法群は生存期間の改善が認められなかった([HR=0.84、95%信頼区間:0.63-1.12、p=0.12)。 また、追跡期間5年時点の最終解析結果が2024年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で報告され、CF療法群に対し、DCF療法群は引き続き有意に生存期間が良好であったのに対し(5年生存割合51.9% vs. 65.1%)、CF+RT療法群はCF療法群に対する有意性を示さなかった(5年生存割合51.9% vs. 60.2%)。 以上の結果は、切除可能な進行食道がんに対する術前の標準療法がDCF療法であることを裏付けるものである。更に、欧米の標準治療である術前CF+RT療法が、術前CF療法と比べて生存期間を延長できなかったこと、また心臓病や肺炎など他病死の誘発が認められたことは、欧米の標準治療にもインパクトを与えると予想される。 加藤健先生(頭頸部・食道内科/消化管内科 科長)は今回の試験の意義として、新薬ではなく既存薬を組み合わせで治療の改善を達成したこと、JCOG主導治験の強みを生かして複数の科の協力の下で実施できたこと、そして最終的に正解にインパクトを与える成果を発信できたことを挙げた。 ただし、術前DCF療法は強力なレジメンであるが故に副作用などの課題もある、と加藤先生。個々の副作用に対する対処法が分かってきているものの、高齢の患者さんや臓器機能に問題がある患者さんでは、CF療法を選択、あるいは術前療法をしないという選択肢もあるため、個々の状態に合わせて選択していくことが重要だろう。 また現在、食道がんの周術期治療として、免疫チェックポイント阻害剤を併用した試験も実施中であり、今後の結果が待たれるところである。 なお、同研究結果は英国時間2024年6月11日(日本時間6月12日)付で世界的5大医学誌のひとつである英国学術雑誌「The Lancet」に掲載されている。 参照元:
国立がん研究センター プレスリリース
ニュース 食道がん 術前療法

浅野理沙

東京大学薬学部→東京大学大学院薬学系研究科(修士)→京都大学大学院医学研究科(博士)→ポスドクを経て、製薬企業のメディカルに転職。2022年7月からオンコロに参加。医科学博士。オンコロジーをメインに、取材・コンテンツ作成を担当。

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