この記事の3つのポイント
・切除不能な局所進行または転移性ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんを第2相SACI-IO HR+試験
・抗TROP2抗体薬物複合体サシツズマブ ゴビテカン+抗PD-1抗体キイトルーダ併用療法の有効性・安全性を検討
・サシツズマブ ゴビテカン単剤療法と比較して無増悪生存期間を改善せず
2024年5月31日から6月4日、米国・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会2024(ASCO 2024)にて、切除不能な局所進行または転移性ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんに対する抗TROP2抗体薬物複合体(ADC)であるサシツズマブ ゴビテカン+抗PD-1抗体であるキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)併用療法の有効性、安全性を比較検証した第2相SACI-IO HR+試験(NCT04448886)の結果がDana-Farber Cancer InstituteのAna Christina Garrido-Castro氏らにより公表された。
本試験は、切除不能な局所進行または転移性ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がん患者に対して、21日を1サイクルとして1、8日目にサシツズマブ ゴビテカン10mg/kg+1日目にキイトルーダ200mg併用療法を実施する群、もしくは21日を1サイクルとして1、8日目にサシツズマブ ゴビテカン10mg/kg単剤療法を実施する群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目としてPD-L1陽性群におけるPFS、全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、安全性等を比較検証した第2相試験である。
本試験に登録された110人の患者背景は、年齢中央値が57歳(27-81歳)、性別は女性が98.1%(N=102人)、前治療歴の種類はCDK4/6阻害薬が76.9%(N=80人)、化学療法が44.2%(N=46人)、化学療法歴なしが55.8%(N=58人)であった。
主要評価項目であるPFSの中央値は、キイトルーダ併用群の8.4ヶ月に対してサシツズマブ ゴビテカン単剤群で6.2ヶ月と、キイトルーダ併用群で病勢進行または死亡のリスクを24%減少(HR:0.76,95%信頼区間:0.47-1.23,P=0.26)するも統計学的有意な差は確認されなかった。
副次評価項目であるORRは、キイトルーダ併用群の21.2%に対してサシツズマブ ゴビテカン単剤群で17.3%を示した。OSの中央値は両群間で未成熟であり、キイトルーダ併用群の16.9ヶ月に対してサシツズマブ ゴビテカン単剤群で17.1ヶ月(HR:0.65,95%信頼区間:0.30-1.41,P=0.28)を示した。
一方の安全性として、キイトルーダ併用群で多く確認されたグレード2以上の有害事象(AE)は、好中球減少症が67.3%、疲労が36.5%、脱毛症が36.5%、貧血が32.7%、白血球減少症が26.9%、下痢が21.2%、吐き気が21.2%であった。サシツズマブ ゴビテカン単剤群では、好中球減少症が59.6%、脱毛症が38.5%、下痢が34.6%、吐き気が32.7%、疲労が32.7%、貧血が21.2%であった。
以上の結果よりAna Christina Garrido-Castro氏らは「切除不能な局所進行または転移性ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんに対するサシツズマブ ゴビテカン+キイトルーダは、PFSを有意に延長はしませんでした。今後ADCと免疫チェックポイント阻害剤併用療法の有効性を予測する因子を更に研究していく必要があります」と結論付けた。
参照元:・抗TROP2抗体薬物複合体サシツズマブ ゴビテカン+抗PD-1抗体キイトルーダ併用療法の有効性・安全性を検討
・サシツズマブ ゴビテカン単剤療法と比較して無増悪生存期間を改善せず
SACI-IO HR+: A randomized phase II trial of sacituzumab govitecan with or without pembrolizumab in patients with metastatic hormone receptor-positive/HER2-negative breast cancer.(ASCO 2024)