この記事の3つのポイント
・BRCA1/2変異陽性HER2陰性転移性乳がんを対象とした第3相試験
・PARP阻害薬Fuzuloparib単剤またはアパチニブとの併用療法の有効性・安全性を検討
・いずれも標準療法と比較して優れた有効性を示す
2024年05月09日、ESMO Virtual Plenaryにて、BRCA1/2変異陽性HER2陰性転移性乳がんに対するPARP阻害薬Fuzuloparib単剤療法、またはVEGFR2阻害薬であるアパチニブとの併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相試験の結果がJules Bordet Institute・Evandro de Azambuja氏らにより公表された。
本試験は、BRCA1/2変異陽性HER2陰性転移性乳がん患者(N=203人)に対して、1日2回Fuzuloparib 150mg単剤療法を投与する群、カペシタビンもしくはゲムシタビン単剤療法を投与する群、もしくは1日2回Fuzuloparib 100mg+アパチニブ500mg併用療法を投与する群に1対1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)を比較検証した第3相試験である。
本試験の結果、主要評価項目であるPFSは、Fuzuloparib+アパチニブ併用群の11.0ヶ月に対してカペシタビンもしくはゲムシタビン単剤群で3.0ヶ月を示し、Fuzuloparib+アパチニブ併用群で病勢進行または死亡のリスクを73%改善した(HR:0.27,95%信頼区間:0.17–0.43,P<0.0001)。また、Fuzuloparib単剤群はカペシタビンもしくはゲムシタビン単剤群に比べて病勢進行または死亡(PFS)のリスクを51%改善した(HR:0.27,95%信頼区間:0.32–0.75,P=0.0004)。更にFuzuloparib単剤群とFuzuloparib+アパチニブ併用群を比較した結果、Fuzuloparib+アパチニブ併用群で病勢進行または死亡のリスクを40%改善した(HR:0.60,95%信頼区間:0.40-0.91)。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認された全グレードの有害事象(AE)発症率は、Fuzuloparib+アパチニブ併用群の98.6%に対してFuzuloparib単剤群で92.5%、グレード3以上のAE発症率は、Fuzuloparib+アパチニブ併用群の51.4%に対してFuzuloparib単剤群で49.3%を示した。治療関連有害事象(TRAE)による治療中止率は、Fuzuloparib+アパチニブ併用群で7.1%、Fuzuloparib単剤群で0%、カペシタビンもしくはゲムシタビン単剤群で3.4%を示し、アパチニブの追加投与により治療中止率は増加傾向であった。
本試験の結果から、BRCA1/2変異陽性HER2陰性転移性乳がんに対するFuzuloparib単剤またはアパチニブとの併用療法は、標準療法である化学療法に代わる有効な治療選択肢となることが示唆された。
参照元:・PARP阻害薬Fuzuloparib単剤またはアパチニブとの併用療法の有効性・安全性を検討
・いずれも標準療法と比較して優れた有効性を示す
Fuzuloparib with or without apatinib in HER2- metastatic breast cancer (mBC) patients (pts) with germline BRCA1/2 mutations (gBRCA1/2m): A randomized phase III trial. (VP2-2024). ESMO Virtual Plenary 2024