この記事の3つのポイント
・HER2陽性転移性乳がんを対象とした第3相DESTINY-Breast03試験
・脳転移に対するエンハーツとカドサイラの有効性・安全性を比較した探索的解析
・脳転移の有無に関わらず、カドサイラと比較してエンハーツで高い効果が認められる
2024年04月24日、医学誌『ESMO Open』にて、HER2陽性転移性乳がんに対する抗HER2抗体薬物複合体であるエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン)とカドサイラ(一般名:トラスツズマブ エムタンシン)の有効性、安全性を比較検証した第3相のDESTINY-Breast03試験(NCT03529110)の脳転移症例における探索的解析の結果がFred Hutchinson Cancer CenterのS.A. Hurvitz氏らにより公表された。
DESTINY-Breast03試験は、治療歴のるHER2陽性の転移性乳がんに対してエンハーツを5.4mg/kg投与する群、もしくはT-DM1を3.6mg/kg投与する群に1対1の割合で無作為に振り分けし、比較検証を実施した国際多施設共同の第3相試験である。今回は、ベースラインで脳転移を有する症例を対象に、盲検独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)、およびBICRによる頭蓋内ORRが評価された。
本試験の結果、脳転移のある患者群におけるPFSの中央値はエンハーツ群の15.0ヶ月(N=43人,95%信頼区間:12.5-22.2ヶ月)に対してT-DM1群で3.0ヶ月(N=39人,95%信頼区間:2.8-5.8ヶ月)と、エンハーツ群で病勢進行または死亡リスクが75%(HR:0.25,95%信頼区間:0.13-0.45)減少した。
一方、脳転移のない患者群におけるPFSの中央値は、エンハーツ群で未到達(95%信頼区間:22.4ヶ月-未到達)であったのに対してT-DM1群で7.1ヶ月(N=39人,95%信頼区間:5.9-9.7ヶ月)、エンハーツ群で病勢進行または死亡リスクが30%(HR:0.70,95%信頼区間:0.22-0.40)減少した。
脳転移のある患者群におけるORRは、エンハーツ群の67.4%に対してT-DM1群で20.5%、脳転移のない患者群におけるORRは、エンハーツ群で82.1%に対してT-DM1群で36.6%をそれぞれ示した。また、頭蓋内ORRは、エンハーツ群の65.7%に対してT-DM1群で34.3%を示した。
以上の結果よりS.A. Hurvitz氏らは、「HER2陽性転移性乳がんに対する2次治療としてのエンハーツは、ベースラインに脳転移を有する場合であっても、カドサイラと比較して臨床的に有効な抗腫瘍効果を示しました」と結論付けた。
参照元:・脳転移に対するエンハーツとカドサイラの有効性・安全性を比較した探索的解析
・脳転移の有無に関わらず、カドサイラと比較してエンハーツで高い効果が認められる
Trastuzumab deruxtecan versus trastuzumab emtansine in HER2-positive metastatic breast cancer patients with brain metastases from the randomized DESTINY-Breast03 trial(ESMO Open 2024. doi:10.1016/j.esmoop.2024.102924)