小児・AYA世代がん経験者が無理なく社会に出ていくために第21回日本臨床腫瘍学会学術集会より


  • [公開日]2024.03.12
  • [最終更新日]2024.03.08

2月22日~24日、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO 2024)が名古屋国際会議場で開催された。同学術集会の「シンポジウム 28:小児・AYA世代がん患者の新規就労支援の現状と課題」のセッションの中で、「小児・AYA世代がんサバイバーの就職活動と支援ニーズ」と題して、前田尚子先生(名古屋医療センター 小児科)が講演した。

前田先生は冒頭、がん患者に対する就労支援の多くは、がん診断時に既に就労している患者さんを対象とした内容となっており、がんサバイバーとして初めて就活をするケースを想定していない、と問題点を指摘。また、小児・AYA世代のがんサバイバー特有の問題として、就労未経験率や就労開始年齢の上昇、専門職への就労割合の低下などが起きている現状を説明した。

小児・AYA世代がんサバイバーが就職困難と感じる要因としては、健康上の問題、病気開示をめぐる患者自身の葛藤や開示した際の企業や学校側の配慮のない対応、病気や障害を持ちながら就活するための情報不足などが挙げられる、と前田先生。小児・AYA世代がんサバイバーは、病気に対する企業側の理解や病気の受け入れ状況に関する情報、また他のサバイバーとの情報交換の場を必要としていることを説明した。

一方で、実際に就活を経験した小児・AYA世代がんサバイバーの声として、医師からの病状や医学的初見の提示、良いキャリアカウンセラーとの出会い、希望する就職先で働く人からの情報提供、履歴書や面接指導、担当医や身近な人からの応援などが、就活の役に立っていることを示した。

愛知県におけるで2023年10月に実施されたWebアンケート結果(97名の医師対象)では、第4期がん対策推進基本計計画の中に「治療と就労の両立支援」が含まれていることを知っていると回答したのはたった48%、また患者さんの就労状況について積極的に把握している医師の割合も約4割という結果であった。また相談支援センターに対する認識も不十分であり、患者さんに勧めたことがある医師は約4割との結果であった。そして、医師が就労支援に取り組む上でのハードルは、支援についての知識不足と対応する時間不足が大きいことを前田先生は指摘。これに対し前田先生は、すべてを医師一人でやる必要はなく、患者さんにまずは声をかけて、少しでも疑問がある場合にはがん相談支援センターにつないでほしいと語った。

小児・AYA世代のがんサバイバーがスムーズに就活に進むためには、思春期頃から早めに就労支援の準備をしていくこと、医師から十分な病状初見を提示すること、そしてサバイバーとがん相談支援センターを確実につなぐことの重要性を強調し講演を締めくくった。

ディスカッションの中では、医師からの十分な病状初見に関して、患者さん自身ができること・できないことを把握できるような説明、更にはどういう働き方が可能か、どこに配慮が必要か、というアドバイスが大切であることが挙げられた。更に、支援センターを活用すること、病院で完結することではなく学校や職場と連携することによる就職支援が理想であると指摘された。

小児・AYA世代のがんサバイバーは、実際のがん治療から時間が経過しているからこそ、就活時に改めて評価すると、身体的・心理的問題が見えてくる場合もある。そのことを適切に評価し、やれること・やれないことを本人と共有すること、そして悩みを相談できる場を提供していくことが今後の課題になりそうだ。

関連リンク:
第21回日本臨床腫瘍学会学術集会

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