がん体験者として抱える多様な悩みに寄り添うために:外科医と内科医の立場から第21回日本臨床腫瘍学会学術集会より


  • [公開日]2024.03.08
  • [最終更新日]2024.03.08

2月22日~24日、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO 2024)が名古屋国際会議場で開催された。「Joint Symposium 1:がん治療後の患者さんの苦痛のサポートをどうするか?」のセッションの中で、腫瘍外科医の立場から廣野靖夫先生(福井大学医学部附属病院 がん診療推進センター / 福井大学医学部附属病院 消化器外科)、消化器外科)、腫瘍内科医の立場から佐々木治一郎先生(北里大学医学部附属新世紀医療開発センター 横断的医療領域開発部門臨床腫瘍学)が、それぞれ発表した。

患者さんは、がんの告知や術前抗がん剤に対する苦痛、手術への不安など、さまざまな困難を抱えて手術を経験することになる、と廣野先生。そのため、外科医はできるだけ低侵襲かつ臓器温存ができる手術を目指してきたと言う。しかしながら、術式を変えても術後の機能障害や合併症まで完全に取り除くことには限界があり、現時点では抜本的な解決法がなく、患者さんの話を聞くことしかできないことも多々あるようだ。

廣野先生によると、最終的には患者さんが苦痛を乗り越える、というよりもむしろ割り切ってもらっている部分も多いのが現状であり、特に外見的なことに比べて個々の臓器機能の術後変化などに対応していくことが難しい。専門家でないと術後の愁訴に対応しきれないことも多いことから、術後のサポートの場においても、看護師や医療スタッフと共に外科医が関わっていくことが大切だ、と廣野先生は語った。

また“サポート”と一言で言っても、術前にはイメージできない変化や昨今の入院期間短縮による不安、治療は成功しているにも関わらず苦痛が生じることへの理解など、精神的・身体的に幅広く長期的ケアが必要である、と廣野。他職種連携によるケアこそが精神的苦痛軽減につながることを強調した。

内科医である佐々木先生もまた、連携の重要性を指摘。自身の北里大学病院緩和ケア専門外来では、在宅支援、がん治療相談、疼痛緩和のそれぞれのニーズに応じた専門診療に分かれていることを説明した。

腫瘍内科医による緩和ケア外来の意義は、長期生存が実現する中での患者さんが抱える治療中/後の生き方や再発への不安に耳を傾けること、また前向きな将来を語る場の提供などである、と佐々木先生は言う。いったんがんに罹患した患者さんは、治療中から安定期に入るまでの間に終末期へ向かう可能性があること、また安定期に入っても常に再発や2次がんのリスクがあることなどから、生涯“がん体験者”としてさまざまな試練を抱えながら生きているため、継続的な支援が必要であることを強調した。

第4期 がん対策推進基本計画には、がんとの共生という項目のひとつに、「がん患者等の社会的な問題への対策(サバイバーシップ支援)」という目標が明記されている。佐々木先生は腫瘍内科医として、有害事象を最小化しQOLや患者さんの希望も考慮した最善の薬物療法の提供はもちろんのこと、長期的な見通しの説明や晩期合併症のフォロー、場合によってはアドバンス・ケア・プランニング(ACP)のサポートも必要であると説明。更には、就労や経済的支援、アピアランスケアや栄養指導などの健康行動の推奨など、多岐にわたって内科医が考えるべきことだと述べた。

最後に佐々木先生は、がん患者さんのピアサポートに対する認知度が低いことを指摘。患者さんに必要なケアに応じて専門家につなぎ、ピアサポートの情報を提供することの重要性を語り講演を締めくくった。

関連リンク:
第21回日本臨床腫瘍学会学術集会

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