この記事の3つのポイント
・TACE適応の肝細胞がんが対象の第3相EMERALD-1試験
・TACEに抗PD-L1抗体薬イミフィンジ+アバスチンを併用することによる有効性・安全性を検証
・TACE単独療法と比較してPFSを有意に改善
2024年01月18~24日、米国・サンフランシスコにて開催された2024 ASCO Gastrointestinal Cancers Symposiumにて、肝動脈化学塞栓療法(TACE)に適応のある切除不能肝細胞がんを対象に、TACE+抗PD-L1抗体薬イミフィンジ(一般名:デュルバルマブ)±アバスチン(一般名:ベバシズマブ)併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のEMERALD-1試験(NCT03778957)の結果がUniversity of Pisa School of MedicineのRiccardo Lencioni氏らにより公表された。
EMERALD-1試験は、TACEに適応のある切除不能肝細胞がんに対して、イミフィンジ+アバスチン+TACEを併用する群(N=204人)、イミフィンジ+TACEを併用する群(N=207人)、TACEのみを投与する群(N=205人)に1対1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目としてTACE単独療法と比較したイミフィンジ+アバスチン併用群の無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目としてTACE単独療法と比較したイミフィンジ併用群のPFS、全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、病勢進行までの期間(TTP)、安全性を比較検証した国際多施設共同二重盲検下試験である。
本試験に登録された616人の患者背景は、BCLCステージAが25.8%、ステージBが57.3%、ステージCが16.1%であり、3群で背景因子に大きなばらつきは見られなかった。
本試験の最終解析の結果、PFSの中央値は、TACE+イミフィンジ+アバスチン併用群の15.0ヶ月に対してTACE単独群で8.2ヶ月と、併用群で病勢進行または死亡のリスクを23%(HR:0.77,95%信頼区間:0.61-0.98,P=0.032)統計学的有意に改善し、主要評価項目基準を達成した。
また、副次評価項目であるPFSの中央値はTACE+イミフィンジ併用群の10.0ヶ月に対してTACE単独群で8.2ヶ月と、こちらも併用群で病勢進行または死亡のリスクを6%(HR:0.94,95%信頼区間:0.75–1.19,P=0.638)減少したが、統計学的有意な差は確認されなかった。
ORRは、TACE+イミフィンジ+アバスチン併用群で43.6%、TACE+イミフィンジ併用群で41.0%、TACE単独群で29.6%を示した。TTPの中央値は、TACE+イミフィンジ+アバスチン併用群で22.0ヶ月、TACE+イミフィンジ併用群で11.5ヶ月、TACE単独群で10.0ヶ月を示した。
一方の安全性として、グレード3もしくは4の治療関連有害事象(TRAE)発症率は、TACE+イミフィンジ+アバスチン併用群で8.4%、TACE+イミフィンジ併用群で4.3%、TACE単独群で3.5%を示した。
以上の結果よりRiccardo Lencioni氏らは、「TACEに適応のある切除不能肝細胞がん患者に対するTACE+イミフィンジ+アバスチン併用療法は、免疫チェックポイント阻害薬ベースの治療でTACEに対してPFSの優越性を示した最初の第3相試験です」と述べた。
参照元:EMERALD-1: A phase 3, randomized, placebo-controlled study of transarterial chemoembolization combined with durvalumab with or without bevacizumab in participants with unresectable hepatocellular carcinoma eligible for embolization.(ASCO GI 2024)