がん種や国の壁を越えた多角的な議論の場に第21回日本臨床腫瘍学会学術集会に向けて


  • [公開日]2024.02.02
  • [最終更新日]2024.02.09

第21回日本臨床腫瘍学会学術集会が2月22日(木)~24(土)に開催される。

今回のテーマは、「Break the Borders and Beyond ~for our patients~」だ。

1月31日に開催された第21回日本臨床腫瘍学会学術集会プレスセミナーで講演した大会長の岩田広治先生(愛知県がんセンター 副院長 兼 乳腺科部長)によると、このテーマに対し、国や立場、専門分野、職種、治療手段の壁をなくし、皆が一つになって議論をすることで、患者さんと明るい未来を切り開いていきたいという願いが込められている。

具体的な目標としては、まずアジアの実臨床にインパクトを与えるような質の高い学会を目指す。そのため、Presidential Sessionでは多くのがん種から新規の臨床データが発表される予定である。また、国際化に向けて海外から計69名の医師を招き、全1258演題のうち511演題が海外からの応募演題となっている。
更に、アカデミアからの報告も重視していくために、一般公募演題の充実にも力を入れている(Oral Session、Mini Oral Session、Poster Sessionなど)。
その他、がん種横断的なテーマのセッションが目立ち、最新の治療法についてはもちろんのこと、遠隔医療や患者・市民参画、アピアランスケアなど、幅広いテーマが取り上げられている。

学会側からの注目トピックとして挙げられているものを紹介する。

ひとつ目はドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスの話題だ。従来から言われているドラッグ・ラグは、治験着手までにかかる時間や人員不足、煩雑な承認システムなどにより、日本での承認が遅れることが課題である。これは体制の見直しにより改善されつつあるが、未だにラグは存在するのが現状だ。しかしもっと大きな問題として、日本での承認の機会を逸している薬剤があるというドラッグ・ロスが挙げられる。これは、海外の開発の中心が、日本に開発拠点を持たないベンチャー企業になってきていることや、Pivotal試験への日本組入れの減少など、様々な原因がある。この問題の解決に向け、産官学それぞれの立場から見た現状や課題について、会長企画シンポジウムの中で議論される予定だ。

ふたつ目は、リアルワールドデータの活用に向けた問題点である。今回は、会長企画シンポジウムの2つのセッションにおいて、情報収集から活用までの基盤整備から実際の活用方法まで、幅広く最新の情報発信や議論が行われる予定だ。

その他、外科と内科、更には異分野との融合の重要性、75歳以上の占める割合が過去最多となった日本の超高齢化社会への対応、そしてがん診療の集約化と均てん化のバランス、などが、会長企画のメインのシンポジウムとして取り上げられるようだ。

学会後の25日(日)には、市民公開講座「心の通う、がん医療を目指して」が開催予定であり、患者さんと医師との関係性に関する日本と海外の違いなどが議論されるようだ。こちらも2月19日まで参加申し込みを受け付けている。

学会は現地とWebのハイブリッド形式での開催である。

参照元:
第21回日本臨床腫瘍学会学術集会

×

会員登録 ログイン