2023年12月25日、愛知県がんセンターは、大腸がんを対象にトリフルリジン・チピラシル+ベバシズマブ併用療法の従来法と隔週法を比較するランダム化第3相PRABITAS試験(jRCTs041230120)を開始したと発表した。
プラグマティック(実用的)臨床試験(Pragmatic clinical trial)とは、参加基準や治療・検査に対する規定など、参加の障害になり得るものを最小限に抑え、より実臨床に近い条件でさまざまな医療機関と患者さんを対象に実施される新しい臨床試験の手法。臨床試験で得られた結果を日常の診療にそのまま活用することができるという特徴がある。
また、参加医療機関からの情報収集も可能な限り簡素化し、臨床試験に関わる人的・金銭的負担や医療機関と担当医の負担が大幅に軽減されることにより、試験のスピードアップや開発費の削減が期待でき、効率的に治療開発を進めることが可能になるという。
今回のPRABITAS試験は、前治療歴のある切除不能大腸がん患者を対象に、トリフルリジン・チピラシル+ベバシズマブ併用療法の隔週法が従来法に対して非劣性であることを検証するランダム化比較試験であり、国内の切除不能大腸がんの第3相試験としては最大規模であるという。
従来法に割り当てられた群は1~5日目と8~12日目にトリフルリジン・チピラシル、1日目と15日目にベバシズマブを投与しその後2週間休薬する。一方、隔週法に割り当てられた群は、1~5日目にトリフルリジン・チピラシル、1日目にベバシズマブを投与し9日間休薬する。その後、治療や検査は日常診療と同様に実施される。
なお、同試験は全国約250の医療機関にて、1年間で890人の患者の参加を予定している。
この臨床試験が検討された背景として、トリフルリジン・チピラシル+ベバシズマブ療法は、大腸がんの標準治療として広く用いられているが、副作用として白血球減少や好中球減少が比較的多くみられる。そのため、抗がん剤を1日2回5日間内服し2日間の休薬を2回繰り返し、その後2週間休薬する従来の28日サイクル(従来法)に対して、より安全で簡便な服用方法として、抗がん剤を5日間内服後に9日間休薬する14日サイクルの隔週法が新たに提唱されている。隔週法は、小規模の臨床試験において副作用を軽減できる傾向があると報告されているもの、実際に有効性と安全性は十分に検証されておらず、両群を比較する臨床試験が求められている。
今回の臨床試験により、隔週法の有効性と安全性が示されれば、簡便かつ副作用の少ない新たな標準治療としてトリフルリジン・チピラシル+ベバシズマブの隔週法を実臨床で提供できるようになることが期待される。さらに、今回日本初の試みとして実施されるプラグマティック臨床試験のメリットや課題が明らかになることで、患者と医療者の双方の負担を軽減できる効果的な臨床試験を提供でき、新しい治療法の開発促進が望まれる。
参照元:愛知県がんセンター プレスリリース