国立がん研究センターと大阪医科薬科大学は12月8日、日本人おける膀胱がんのFGFR (fibroblast growth factor receptor) 遺伝子変異(融合遺伝子を含む)の割合と、変異症例における腫瘍免疫微小環境の多様性についての研究成果を報告した。
この研究では、膀胱がん389例と正常膀胱組織35例の全エクソームシーケンスおよびRNAシーケンス、ティッシュマイクロアレイを用いた免疫染色、臨床的な治療成績や予後のデータを用いた包括データ解析を実施した。
その結果、まずFGFR3変異をもつ症例は、表在性膀胱がんの約45%、筋層浸潤性膀胱がんの約15%であり、後者のみで基底上皮細胞系の遺伝子パスウェイが活性化していた。また、FGFR3変異の予後への影響にも違いが見られた。
更に、FGFR3変異が免疫微小環境に与える影響を調べるために、がん組織を細胞タイプとその細胞状態まで細分化し分類した結果、FGFR3変異の中でも免疫微小環境に多様性が存在することが分かった。
最後に、解析対象とした389例中72例が経過観察中に免疫チェックポイント阻害薬で治療されていたため、その治療奏効を解析。膀胱がんの分子サブタイプと遺伝子変異の有無を組み合わせたて解析した結果、LumP(管腔乳頭サブタイプ)/FGFR3変異症例群とLumP/正常FGFR3症例群とでは治療奏効率に大きな違いがみられた。
これまで一様に免疫チェックポイント阻害薬の効果が低いとされたきたFGFR3変異症例だが、今回の結果から、FGFR3変異症例内における腫瘍免疫微小環境の多様性が明らかとなった。
今後の展望として、膀胱がんの分子サブタイプと遺伝子変異を組み合わせることによって、正確な治療奏効率の予測が可能になることが示唆された。更に、分子サブタイプごとの治療標的候補も同定されたため、症例ごとのプレシジョン・メディシン(精密医療)や免疫複合療法の実現が期待される。
なお今回の結果は、学術誌「Molecular Cancer」に2023年11月18日付で掲載されている。
参照元:
国立がん研究センター プレスリリース
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