患者さんとともに実践するアピアランスケアを目指して第64回日本肺癌学会学術集会より


  • [公開日]2023.11.15
  • [最終更新日]2023.11.10

11月2日~4日、第64回日本肺癌学会学術集会が幕張メッセで行われた。同学術集会のセッション「メディカルスタッフシンポジウム2 アピアランスケア企画」の中で、「EGFR阻害薬の皮膚障害 スキンケアの大切さ」について、谷口純子氏(大阪国際がんセンター看護部)が発表した。

皮疹は痛みや痒み、アピアランスに大きな影響があり、副作用の苦痛を感じる症例の上位を占める、と谷口氏。 過去に海外で実施されたSTEPP試験(予防的な皮膚治療が抗 EGFR 抗体薬による皮疹の発現を減少させうることを示した試験)を例に、良好なQOL生活の質)を維持しつつ治療を継続していくためには、皮膚障害に対する予防的ケアが有効であることを説明した。

谷口氏によると、皮膚障害対策には2つの柱がある。 まず1つが薬の処方。具体的には、予防・出現・増悪の3つの段階に対する薬の「セット処方」を使って薬剤を使い分けているとのことだ。

そしてもう1つがスキンケア支援。清潔・保湿・保護をバランスよく生活に取り入れるために医師だけでなく医療スタッフ全体で患者さんを支えることが重要になる。

谷口氏の所属する大阪国際がんセンターでは、SPRASH委員会(スプラッシュ:がん薬物療法における皮膚症状対策チーム)を設け、セット処方や患者さん指導用パンフレットの管理、看護師の教育、患者さんに向けたスキンケア教室の実施など、チーム医療の一環として活動している。そして、具体的なケアの体制としては、「患者さんへの薬剤師による指導→看護師による理解の確認・補足説明→保湿剤使用の説明やテーピングの体験→スキンケアの実践状況や症状の把握・記録→ケアの継続」という流れで実施しているそうだ。

スキンケアのポイントは、患者さんと一緒に考えながら進めていくこと、と谷口氏は言う。パンフレットなどを使った指導だけでは不十分であり、患者さんの社会生活をイメージしながら実践可能な方法を探ることが大切だ。もう1つ重要なポイントは、洗う・塗る・保護する、ということを一緒にやってみること。実際に、爪囲炎の患部の“洗浄”に関して、その方法や程度に患者さんと看護師との間の認識のズレがあった経験を紹介し、ケアの正しい実践のためには、言葉で伝えるだけでなく患者さんと一緒にやることの大切さを強調した。

最後に、施設の取り組みとして実施されているSPRASHのスキンケア教室の動画を紹介し、講演を締め括った。

関連リンク大阪国際がんセンター スキンケア教室配信動画一覧

座長の西野和美先生(大阪国際がんセンター呼吸器内科)は、昨今よく使われるようになってきたShared Decision Making(SDM)という言葉について、治療選択だけにフォーカスされて言葉が独り歩きしていることへの懸念を示した。そして、良い治療を選択して生存期間を伸ばすことこそがSDMの主目的だと考えがちであるが、アピアランスケアを含めた副作用サポートもしっかりと行い、高いQOLを維持できるような治療を目指していくことが大切だ、とコメントし、本セッションを締めた。

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