この記事の3つのポイント
・EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんを対象とした第3相のMARIPOSA試験
・抗EGFR/MET完全ヒト型二重特異性抗体アミバンタマブと第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害剤ラゼルチニブの有効性・安全性を検証
・標準治療であるタグリッソと比較して無増悪生存期間を有意に改善
2023年10月20~24日、スペイン・マドリードで開催されたESMO(欧州臨床腫瘍学会)にて、EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する初回治療として、EGFRおよびMETを標的とする完全ヒト型二重特異性抗体であるアミバンタマブ+第3世代チロシンキナーゼ阻害薬であるラゼルチニブ併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のMARIPOSA試験(NCT04487080)の結果が公表された。
MARIPOSA試験は、EGFRエクソン19欠失変異(ex19del)またはエクソン21(L858R)置換変異を有する局所進行性または転移性NSCLCに対する初回治療として、アミバンタマブ+ラゼルチニブ併用療法を実施する群、もしくはオシメルチニブ(製品名:タグリッソ)単剤を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として盲検下独立中央評価により評価した無増悪生存期間(PFS)、副次的評価項目として全生存期間(OS)、全奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)、最初の治療開始から後続治療後の病勢進行または死亡までの期間(PFS2)を比較検証した第3相試験である。
本試験の結果、主要評価項目であるPFSの中央値はアミバンタマブ+ラゼルチニブ併用群の23.7ヶ月(95%信頼区間:19.1-27.7ヶ月)に対してタグリッソ単剤群で16.6ヶ月(95%信頼区間:14.8-18.5ヶ月)と、アミバンタマブ+ラゼルチニブ併用群で病勢進行または死亡のリスクが30%改善した(HR:0.70,95%信頼区間:0.58-0.85,P<0.001)。またPFSの改善は、脳転移の有無に関わらず認められた。
副次評価項目であるORRは、アミバンタマブ+ラゼルチニブ併用群の86%に対してタグリッソ単剤群で85%を示した。またDORの中央値は、アミバンタマブ+ラゼルチニブ併用群の25.8ヶ月(95%信頼区間:20.1ヶ月-未到達)に対してタグリッソ単剤群で16.8ヶ月(95%信頼区間:14.8–18.5ヶ月)であり、OSの中間解析においても改善傾向が見られた(HR:0.80,95%信頼区間:0.61–1.05,P=0.11)。
一方の安全性として、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止率は、アミバンタマブ+ラゼルチニブ併用群の10%に対してタグリッソ単剤群で3%を示した。また、静脈血栓塞栓症(VTE)発症率は、アミバンタマブ+ラゼルチニブ併用群の37%に対してオシメルチニブ単剤群で9%であったが、そのほとんどは治療初期に低グレードで発症したことから、予防的抗凝固薬投与により対処された。
以上の結果から、EGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対するアミバンタマブ+ラゼルチニブ併用療法は、新たな標準治療として確立することが期待される。
参照元:Cho BC, et al. Amivantamab plus lazertinib vs osimertinib as first-line treatment in patients with EGFR-mutated, advanced non-small cell lung cancer (NSCLC): Primary results from MARIPOSA, a phase III, global, randomized, controlled trial. ESMO Congress 2023, LBA14