この記事の3つのポイント
・切除不能転移性脱分化型脂肪肉腫を対象とした第3相のMANTRA試験
・MDM2阻害薬ミラデメタン+化学療法の有効性・安全性を検証
・ヨンデリス+化学療法に比べ、ミラデメタン+化学療法による有意な効果は認められず
2023年10月20~24日、スペイン・マドリードで開催されたESMO(欧州臨床腫瘍学会)にて切除不能転移性脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)に対するMDM2阻害薬であるミラデメタン+化学療法の有効性、安全性を検証した第3相のMANTRA試験の結果がRobin L. Jones氏らにより公表された。
MANTRA試験は、切除不能転移性DDLPSに対してミラデメタン+化学療法を実施する群、もしくはトラベクテジン(製品名:ヨンデリス)+化学療法を実施する群に無作為に振り分け、評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏効率(RR)などを検証した国際多施設共同ランダム化の第3相試験である。
本試験の結果、PFSの中央値はミラデメタン+化学療法群の3.6ヶ月(95%信頼区間:2.1-4.1ヶ月)に対してトラベクテジン+化学療法群で2.2ヶ月(95%信頼区間:1.9-4.2ヶ月)と、両群間で統計学的有意な差は確認されなかった(HR:0.89,95%信頼区間:0.61–1.29)。
OSの中央値はミラデメタン+化学療法群の9.5ヶ月に対してトラベクテジン+化学療法群で10.2ヶ月と、両群間で統計学的有意な差は確認されなかった(HR:1.27,95%信頼区間:0.80–2.04)。
盲検下独立中央審査によるORRは、ミラデメタン+化学療法群の4.7%に対してトラベクテジン+化学療法群で3.4%(p=0.667)、主治医評価のORRはミラデメタン+化学療法群の10.5%に対してトラベクテジン+化学療法群で2.2%を示した(p=0.026)。
最も多くの患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は、嘔吐がミラデメタン+化学療法群で62.8%に対してトラベクテジン+化学療法群で58.2%、血小板減少症が60.5%に対して24.1%、好中球減少症が41.9%に対して35.4%であった。グレード3から4のTRAEは、血小板減少症がミラデメタン+化学療法群39.5%に対してトラベクテジン+化学療法群13.9%、好中球減少症が25.6%に対して25.3%、貧血が11.6%に対して17.7%であった。グレード5のTRAEはミラデメタン+化学療法群で0人、トラベクテジン+化学療法群で2人の患者で確認された。
以上の結果からRobin L. Jones氏は、「PFS差は有意ではありませんでしたが、有害事象は過去の報告と一致しており、用量の中断/変更により管理可能でした。MDM2阻害が有益と思われる集団においては、さらなるミラデメタンの評価が必要です」と述べている。
参照元:Jones RL, et al. Efficacy and safety findings from MANTRA – a global, randomized, multicenter, phase 3 study of the MDM2 inhibitor milademetan vs trabectedin in patients with dedifferentiated liposarcomas. ESMO Congress 2023, LBA89