治療歴のあるHER2活性型変異陽性進行性固形がんに対するエンハーツ、がん種横断的な抗腫瘍活性を示すESMO2023より


  • [公開日]2023.11.08
  • [最終更新日]2023.11.07
この記事の3つのポイント
・治療歴のあるHER2活性型変異陽性進行性固形がんを対象とした第2相のDESTINY-PanTumour01試験
・抗HER2抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステカン有効性安全性を検証
・がん種横断的な抗腫瘍活性を示す

2023年10月20~24日、スペイン・マドリードで開催されたESMO(欧州臨床腫瘍学会)にて治療歴のあるHER2活性型変異陽性進行性固形がんに対する抗HER2抗体薬物複合体(ADC)であるトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd, 商品名:エンハーツ)の有効性、安全性を比較検証した第2相のDESTINY-PanTumour01試験の結果が公表された。

DESTINY-PanTumour01試験は、複数治療歴のあるHER2陽性進行性固形がんに対して3週を1サイクルとしてT-Dxd5.4mg/kgを投与し、主要評価項目として客観的奏効率ORR)、副次評価項目として無増悪生存期間PFS)などを検証した多施設共同オープンラベルの第2相試験である。本試験には102人が登録され、中央値で3レジメン前治療歴を有していた。

追跡期間中央値8.6カ月時点での結果は、主要評価項目であるORRは29.4%(95%信頼区間:20.8–39.3%)、DORの中央値は未到達であったが、奏効を示した54.2%の患者において、18ヶ月時点の検査でも持続的な奏効が確認された。PFSの中央値は5.4ヶ月(95%信頼区間:2.7-7.1ヶ月)を示した。がん種別のORRは、20人の乳がん患者で50.0%、20人の大腸がん患者で20.0%、19人の胆道がんで10.5%をそれぞれ示した。

一方の安全性として、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率は25.5%を示し、エンハーツ関連の有害事象(AE)による治療中止率は7.8%を示した。薬剤関連性の間質性肺炎は11.8%(N=11人)の患者で確認され、重度な間質性肺炎はグレード3が1人、グレード5が2人の患者で確認された。

以上の結果を受けてMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのBob T. Li氏は、「DESTINY-PanTumour01試験は、HER2遺伝子変異を標的としたT-DXdの初めてのがん種横断的な国際共同試験です。T-DXdは、治療選択肢の限られた複数の前治療歴のある患者において、有望な抗がん活性の持続的効果に寄与し、安全性プロファイルも確認されました」と結論付けている。

参照元:
Li BT, et al. Efficacy and safety of trastuzumab deruxtecan (T-DXD) in patients (pts) with solid tumors harboring specific HER2-activating mutations (HER2m): primary results from the international phase 2 DESTINY-PanTumor01 (DPT-01) study. ESMO Congress 2023, Abstract 654O

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