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CGP検査が広く適切に使われるために:現状と課題克服への道筋

[公開日] 2023.12.04[最終更新日] 2023.12.04

11月2日~4日、第64回日本肺癌学会学術集会が幕張メッセで行われた。同学術集会のセッション「分子標的治療とprecision medicine」の中で、「肺癌に対する遺伝子パネル検査の実際と出口戦略の検討」について、高濱隆幸先生(近畿大学医学部腫瘍内科/近畿大学病院ゲノム医療センター)が発表した。

日本におけるゲノム医療の普及は十分か

高濱先生によると、保険診療でがんゲノムプロファイリング検査(CGP検査)を受けられるようになった2019年6月から現在までに約6万人のがん患者さんが検査を受けたことが報告されている。そして検査数は年々増加傾向にあり、現時点で年間2万を超えてきているのが現状である。 しかしながら、毎年40万人ががんで死亡しているという事実を考えると、検査実施の数値とは乖離がある、と高濱先生。特に肺がんに着目すると、遺伝子変異に基づく治療自体は進んでいるにもかかわらず、CGPの実施割合(C-CAT登録件数と年間死亡者数から算出)は5.7%であり、全がん種の8位とむしろ遅れをとっているようにさえ感じる、と高濱先生はコメントした。

近大コホート研究から見えてきたこと

上記のような背景を受け、近畿大学における肺がんCGP検査の状況把握と課題抽出を目的としたコホート研究が実施された。対象は、2019年ー2022年に近畿大学病院でCGP検査を受けた肺がん患者さんのうち文書による同意を得られた100例。C-CATの登録情報とカルテレビューによる調査によって解析が実施された。100例の患者背景は、年齢の中央値が65歳(45ー86歳)、男性が69%、TKI治療歴のある症例が15%、また腺がんをはじめ、扁平上皮がんや小細胞肺がんなどの組織型も含まれていた。 検体採取は、92%が腫瘍組織から実施されており、そのうちの7割以上で生検検体が使われた。診断時から既にCGP検査を見越して複数回の生検を繰り返し、多くの検体を取るように心がけていることが同結果に表れているようだ。そして組織型に関しては、腺がんにとどまらず非小細胞肺がんであれば検討の余地がある、と高濱先生は説明した。特に診断時に既に特定の遺伝子変異が見つかっており、分子標的薬を実施済みの症例であっても、耐性変異の検出目的で使う有用性があるようだ。 CGP検査後の治療に関しては、非小細胞肺がんの17%(13/76例)でエキスパートパネルによりCGP検査結果に沿った治療に到達していた。治療の内容を見てみると、臨床試験だけでなく処方薬を使った治療が推奨されるケースも多いという特徴が見られた。一方の小細胞肺がんでは、24例の検査が実施されたが、治療に到達した症例はいなかった。その理由として、小細胞肺がんにおいては、開発の標的とCGP検査で検出できる遺伝子にギャップがあることが指摘された。 推奨治療が提示されたにもかかわらず実施できなかった症例については、エキスパートパネル実施から結果説明までの間にPS(パフォーマンスステータス)不良になる場合があること、CGP検査実施の条件である「標準治療終了」の状態では治験の適格基準から外れてしまう(前治療数が多すぎる)こと、そして治験施設が遠方であるなどの原因により、患者の意思で治療を断念せざるを得ない場合があることなどが理由として挙がった。 今回の結果を受けて改めてCGP検査後の治療到達率について従来の報告を見てみると、よく目にするC-CATのデータでは9.4%と報告されているが、文献で報告された国内のデータにはかなりばらつきがある、と高濱先生。そして改めて近大コホートの非小細胞肺がんの結果である17%という数字を示し、想定よりも高い確率で治療に到達できる可能性を強調した。

検査の入口にも出口にも制限のある日本

高濱先生は日本におけるCGP検査の体制に関して、検査を実施できる施設が限られており、検査ができたとしても、参加できる臨床試験数が少ないこと、試験実施施設へのアクセスが難しいこと、登録の適格基準が厳しいこと、費用の負担があることなど、いくつものハードルがあることを指摘。検査とその後の臨床試験へのアクセスの課題を認識し、いつどの施設で実施すべきかということを早い段階から考えていくことが必要だとコメントした。 そして同時に、がんゲノム医療の”集約化”によりCGP検査の恩恵を受けにくい地域の患者さんがたくさんいる状況を解決していくことが重要だと高濱氏。中核拠点病院だけでなく、連携病院やその周辺の施設とのつながりを通して広く検査を受け入れる”均てん化”された体制づくりの必要性を語り、講演を締めた。
ニュース 固形がん CGP検査

浅野理沙

東京大学薬学部→東京大学大学院薬学系研究科(修士)→京都大学大学院医学研究科(博士)→ポスドクを経て、製薬企業のメディカルに転職。2022年7月からオンコロに参加。医科学博士。オンコロジーをメインに、取材・コンテンツ作成を担当。

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