この記事の3つのポイント
・再発リスクのある前立腺がん患者を対象とした第3相のEMBARK試験
・イクスタンジ+ADT併用療法、イクスタンジ単剤療法、ADTの有効性安全性を比較検証
・ADTに比べ、イクスタンジ+ADT併用療法で無転移生存期間(MFS)を統計学的有意に改善
2023年10月19日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて再発リスクのある前立腺がんに対する経口アンドロゲン受容体阻害薬であるエンザルタミド(商品名:イクスタンジ)+アンドロゲン除去療法(ADT)、アンドロゲン除去療法(ADT)、イクスタンジ単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のEMBARK試験(NCT02319837)の結果がCenter for Integrated Research in Cancer and LifestyleのStephen J. Freedland氏らにより公表された。
本試験は、再発リスクのある前立腺がん患者(N=1068人)に対して1日1回イクスタンジ160mg+12週を1サイクルとしてアンドロゲン除去療法(ADT)を実施する群(N=355人)、プラセボ+12週を1サイクルとしてアンドロゲン除去療法(ADT)を実施する群(N=358人)、もしくは1日1回イクスタンジ160mg単剤療法を実施する群(N=355人)に1対1対1の割合で振り分けて比較検証した第3相試験。主要評価項目は、独立委員会評価によるアンドロゲン除去療法(ADT)に比べたイクスタンジ+アンドロゲン除去療法(ADT)の無転移生存期間(MFS)である。
本試験のフォローアップ期間中央値60.7ヶ月時点における結果、5年無転移生存率(MFS)はイクスタンジ+アンドロゲン除去療法(ADT)群の87.3%(95%信頼区間:83.0%-90.6%)に対して、アンドロゲン除去療法(ADT)群で71.4%(95%信頼区間:65.7%-76.3%)、イクスタンジ単剤療法群で80.0%(95%信頼区間:75.0%-84.1%)を示した。
アンドロゲン除去療法(ADT)に比べてイクスタンジ+アンドロゲン除去療法(ADT)は、無転移生存期間(MFS)のリスクを58%統計学的有意に改善した(HR:0.42,95%信頼区間:0.30-0.61,P<0.001)。また、アンドロゲン除去療法(ADT)に比べてイクスタンジ単剤療法は、無転移生存期間(MFS)のリスクを37%統計学的有意に改善した(HR:0.63,95%信頼区間:0.46-0.87,P=0.005)。
以上のEMBARK試験の結果よりStephen J. Freedland氏らは「再発リスクのある前立腺がんに対する経口アンドロゲン受容体阻害薬イクスタンジ+アンドロゲン除去療法(ADT)、イクスタンジ単剤療法は、アンドロゲン除去療法(ADT)に比べて無転移生存期間(MFS)を統計学的有意に改善しました」と結論を述べている。
参照元:Improved Outcomes with Enzalutamide in Biochemically Recurrent Prostate Cancer(N Engl J Med 2023; 389:1453-1465 DOI: 10.1056/NEJMoa2303974)