この記事の3つのポイント
・治療歴のある再発小細胞肺がんを対象とした第2相試験
・トポテカンにberzosertibを併用することの有効性・安全性を検証
・併用療法により主要評価項目であるPFSは改善されず
2023年10月12日、医学誌『JAMA Oncology』にて、治療歴のある再発小細胞肺がん(SCLC)に対するトポテカン単剤療法、トポテカン+ATR阻害薬であるberzosertib併用療法の有効性、安全性を検証した第2相試験(NCT03896503)の結果が国立がん研究センター東病院の高橋信行氏らにより公表された。
本試験は、治療歴のある再発SCLCに対して、21日を1サイクルとして1~5日目にトポテカン1.25mg/m2単剤を病勢進行または有害事象(AE)が発現するまで投与する群、もしくは21日を1サイクルとして1~5日目にトポテカン1.25mg/m2+2、5日目にberzosertib 210mg/m2をを投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として全患者群(Intention to toreat)における無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)を比較検証した第2相試験である。
本試験に登録された60人の患者背景は、年齢中央値が59歳(34-79歳)、性別は男性55%(N=33人)、トポテカン単剤群20人、トポテカン+berzosertib併用群40人であった。
フォローアップ期間中央値21.3ヶ月時点における結果、主要評価項目であるPFSの中央値はトポテカン単剤群の3.0ヶ月(95%信頼区間:1.2-5.1ヶ月)に対してトポテカン+berzosertib併用群で3.9ヶ月(95%信頼区間:2.8-4.6ヶ月)と、両群間で統計学的有意な差は確認されなかった(HR:0.80,95%信頼区間:0.46-1.41,P=0.44)。
副次評価項目であるOSの中央値は、トポテカン単剤群の5.4ヶ月(95%信頼区間:3.2-6.8ヶ月)に対してトポテカン+berzosertib併用群で8.9ヶ月(95%信頼区間:4.8-11.4ヶ月)と、トポテカン+berzosertib併用群で死亡のリスクを47%(HR:0.53,95%信頼区間:0.29-0.96,P=0.03)統計学的有意に改善した。
一方の有害事象プロファイルは2群間で類似しており、グレード3もしくは4の血小板減少症発症率はトポテカン単剤群の55%(N=11/20人)に対してトポテカン+berzosertib併用群で50%(N=20/40人)、全グレードの嘔吐発症率はトポテカン単剤群の45%(N=9/20人)に対してトポテカン+berzosertib併用群で35%(N=14/40人)を示した。
以上の第2相試験の結果より、高橋信行氏らは「治療歴のある再発SCLC患者に対するトポテカン+ATR阻害薬+berzosertib併用療法は、トポテカン単剤療法に比べてPFSを統計学的有意に改善はしませんでしたが、副次評価項目であるOSは統計学的有意な改善傾向を示しました」と結論を述べている。
参照元:Berzosertib Plus Topotecan vs Topotecan Alone in Patients With Relapsed Small Cell Lung Cancer(JAMA Oncol 2023. doi:10.1001/jamaoncol.2023.4025)