この記事の3つのポイント
・t(11;14)染色体異常陽性の多発性骨髄腫を対象とした第3相CANOVA試験
・BCL-2阻害薬であるベネトクラクス+デキサメタゾン併用療法の有効性、安全性を比較検証
・ベネトクラクス+デキサメタゾンにより改善傾向は見られるものの統計的優位性は示せず
米アッヴィ社は09月29日、治療歴のあるt(11;14)染色体異常陽性の再発難治性多発性骨髄腫(RRMM)に対するBCL-2阻害薬であるベネトクラクス(製品名:ベネクレクスタ)+デキサメタゾン併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のCANOVA試験の結果を発表した。
CANOVA試験は、2レジメン以上の治療歴のあるt(11;14)染色体異常陽性のRRMMに対して、ベネトクラクス+デキサメタゾン併用療法を実施する群、もしくはポマリドミド(製品名:ポマリスト)+デキサメタゾン併用療法を実施する群に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、有害事象(AE)発症率などを比較検証した試験である。
本試験の結果、主要評価項目であるPFSの中央値は、ベネトクラクス+デキサメタゾン併用群の9.9ヶ月に対してポマリドミド+デキサメタゾン併用群で5.8ヶ月、ベネトクラクス+デキサメタゾン併用群で病勢進行または死亡のリスクを17.7%減少(HR:0.823,95%信頼区間:0.596-1.136,P=0.237)させたが、統計学的有意な差は確認されなかった。
副次評価項目であるORRは、ベネトクラクス+デキサメタゾン併用群の62%に対してポマリドミド+デキサメタゾン併用群で35%(P<0.001)、最良部分奏効率(VGPR)はベネトクラクス+デキサメタゾン併用群の39%に対してポマリドミド+デキサメタゾン併用群で14%を示した。OSの中央値はベネトクラクス+デキサメタゾン併用群の32.4ヶ月に対してポマリドミド+デキサメタゾン併用群で24.5ヶ月(HR:0.697,95%信頼区間:0.472-1.029,P=0.067)を示した。
次の治療までの期間(TTNT;time to next treatment)の中央値は、ベネトクラクス+デキサメタゾン併用群の21.2ヶ月に対してポマリドミド+デキサメタゾン併用群で8.3ヶ月(HR:0.546,95%信頼区間:0.385-1.029,P=0.776,P=0.001)を示した。
一方の安全性として、20%以上の患者で確認されたベネトクラクス+デキサメタゾン併用群の主なAEは感染症が61%、下痢が41%、リンパ球減少症が24%、吐き気が22%を示した。
以上のCANOVA試験の結果よりアッヴィ社のMariana Cota Stirner医師は「ベネトクラクス+デキサメタゾン併用療法は、再発難治性多発性骨髄腫の無増悪生存期間を統計学的有意に改善はしませんでしたが、改善傾向が確認はされたので、本疾患の標準治療になり得る可能性を今後も検証していきます」とコメントしている。
参照元:アッヴィ社 プレスリリース