この記事の3つのポイント
・PD-L1≧50%の進行性非小細胞肺がんを対象とした第3相EMPOWER-Lung 1試験
・セミプリマブ単剤の長期追跡の結果、および二次治療としての化学療法追加効果を検証
・セミピリマブは化学療法と比較して長期的な効果を示すと共に、進行時の化学療法の追加効果も認められた
2023年08月14日、医学誌『The Lancet Oncology』にてPD-L1≧50%の進行性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する初回治療としての抗PD-1抗体薬セミプリマブ(cemiplimab)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のEMPOWER-Lung 1試験(NCT03088540)の長期フォローアップの結果、および病勢進行時にセミピリマブに化学療法を追加した場合の結果がIstanbul University CerrahpaşaのMustafa Özgüroğlu氏らにより公表された。
EMPOWER-Lung 1試験は、進行性NSCLC(N=712人)に対して3週を1サイクルとしてセミプリマブ350mg単剤を病勢進行まで最大108週間投与する群(N=357人)、もしくは主治医選択の化学療法を実施する群(N=355人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として盲検下独立中央判定(BICR)による全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)を比較検証した多施設共同オープンラベルの第3相試験である。
なお、主要評価項目は、無作為に割り付けられたすべての登録患者およびPD-L1発現が50%以上の患者(セミプリマブ群284例、化学療法群281例)において評価した。
本試験のフォローアップ期間中央値35ヶ月時点で、主要評価項目である全生存期間(OS)中央値は、PD-L1≧50%の集団において、セミプリマブ(cemiplimab)群の26.1ヶ月(95%信頼区間:22.1-31.8ヶ月)に対して主治医選択の化学療法群で13.3ヶ月(95%信頼区間:10.5-16.2ヶ月)と、セミプリマブ(cemiplimab)群で死亡(OS)のリスクが43%減少(HR:0.57,95%信頼区間:0.46-0.71,P<0.0001)した。
もう1つの主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は、PD-L1≧50%の集団において、セミプリマブ(cemiplimab)群の8.1ヶ月(95%信頼区間:6.2-8.8ヶ月)に対して主治医選択の化学療法群で5.3ヶ月(95%信頼区間:4.3-6.1ヶ月)と、セミプリマブ(cemiplimab)群で病勢進行または死亡のリスクが49%減少(HR:0.51,95%信頼区間:0.42-0.62,P<0.0001)した。
また、二次治療としてセミプリマブ+化学療法を継続した結果(n=64)、PFSは6.6ヵ月(6.1-9.3ヶ月)、全生存期間中央値は15-1ヵ月(11.3-18.7ヶ月)であった。
最も多くの患者で確認されたグレード3もしくは4の有害事象(AE)は、貧血がセミプリマブ群の4%(N=15人)に対して主治医選択の化学療法群で17%(N=60人)、また好中球減少症は1%(N=3人)対10%(N=35人)、肺炎は5%(N=18人)対4%(N=13人)を示した。治療関連有害事象(TRAE)による死亡はセミプリマブ群の3%(N=10人)に対して主治医選択の化学療法群で2%(N=7人)で確認された。
以上のEMPOWER-Lung 1試験の長期フォローアップ結果より、Mustafa Özgüroğlu氏らは、「35ヵ月の追跡調査において、PD-L1≧50%の進行性NSCLCに対するセミピリマブの生存ベネフィットは、追跡期間1年時点と同程度であり、第一選択薬としての使用を支持するものである。また、進行時にセミプリマブに化学療法を追加することは、新たな二次治療となる可能性がある」と結論付けた。
First-line cemiplimab monotherapy and continued cemiplimab beyond progression plus chemotherapy for advanced non-small-cell lung cancer with PD-L1 50% or more (EMPOWER-Lung 1) (The Lancet Oncology 2023; DOI:https://doi.org/10.1016/S1470-2045(23)00329-7)あなたは医師ですか。