HER2陽性転移性乳がんに対する初回治療としてのパージェタ+ハーセプチン療法、化学療法と併用せずとも有効かJAMA Oncologyより


  • [公開日]2023.08.17
  • [最終更新日]2023.08.17
この記事の3つのポイント
HER2陽性転移性乳がんを対象とした第2相試験
・抗HER2ヒト化モノクローナル抗体パージェタ+ハーセプチン±化学療法有効性安全性を比較検証
・パージェタ+ハーセプチンは、化学療法との併用療法と同等の効果を示す

2023年08月10日、医学誌『JAMA Oncology』にて、HER2陽性転移性乳がんに対する初回治療として抗HER2ヒト化モノクローナル抗体ペルツズマブ(商品名:パージェタ)+抗HER2ヒト化モノクローナル抗体トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)±化学療法の有効性、安全性を比較検証した第2相試験(NCT01835236)の結果がCantonal Hospital St GallenのJens Huober氏らにより公表された。

本試験は、HER2陽性転移性乳がんに対する初回治療として、3週を1サイクルとしてペルツズマブ420mg(初回は840mg)+トラスツズマブ6mg/kg(初回は8mg/kg)を投与する群、もしくは3週を1サイクルとしてペルツズマブ420mg(初回は840mg)+トラスツズマブ6mg/kg(初回は8mg/kg)+4週を1サイクルとして1、8、15日目にパクリタキセル90mg/m2もしくは3週を1サイクルとして1、8日目にビノレルビン30mg/m2(初回は25mg/m2)併用療法を実施し、化学療法中止後の維持療法としてペルツズマブ+トラスツズマブ併用療法を投与する群に分け、主要評価項目として24ヶ月全生存率(OS)、一次治療時点の無増悪生存期間PFS)を比較検証した試験である。

本試験が開始された背景として、HER2陽性転移性乳がんに対する初回治療としては抗HER2ヒト化モノクローナル抗体ペルツズマブ+トラスツズマブにタキサン抗がん剤を併用する治療が標準療法である。一方で、HER2陽性転移性がんに対してペルツズマブ+トラスツズマブ療法だけでも抗腫瘍効果があることは以前から報告があり、初回の化学療法を行わない治療の可能性も示唆されてきた。そこで、ペルツズマブ+トラスツズマブのみの治療が第一選択となり得るかを検証するために本試験が開始された。

本試験には210人の患者が登録され、年齢中央値は58歳(26-85歳)であった。主要評価項目である24ヶ月OSはペルツズマブ+トラスツズマブ併用群の79.0%(90%信頼区間:71.4%-85.4%)に対してペルツズマブ+トラスツズマブ+化学療法併用群で78.1%(90%信頼区間:70.4%-84.5%)を示した。

また、一次治療時点のPFSはペルツズマブ+トラスツズマブ併用群の8.4ヶ月(95%信頼区間:7.9-12.0ヶ月)に対してペルツズマブ+トラスツズマブ+化学療法併用群で23.3ヶ月(95%信頼区間:18.9-33.1ヶ月)を示した。

安全性に関しては、化学療法を行わなかった群の方が有害事象は少なく、僅かながらQOLベースラインからの改善もより安定して認められた。

以上の第2相試験の結果よりJens Huober氏らは、「HER2陽性転移性乳がんに対する初回治療としての抗HER2ヒト化モノクローナル抗体ペルツズマブ+トラスツズマブ併用療法は、OSの観点では化学療法併用群に比べて劣ることはなく、安全に実施可能な選択肢となることを示唆している」と結論を述べた。

Pertuzumab Plus Trastuzumab With or Without Chemotherapy Followed by Emtansine in ERBB2-Positive Metastatic Breast Cancer (JAMA Oncol. August 10, 2023. doi:10.1001/jamaoncol.2023.2909)

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