この記事の3つのポイント
・中枢神経系転移のあるBRAFV600遺伝子変異陽性の悪性黒色腫を対象とした単群第2相TRICOTEL試験
・抗PD-L1抗体薬アテゾリズマブ+BRAF阻害薬ベムラフェニブ+MEK阻害薬コビメチニブ併用療法の有効性、安全性を検証
・3剤併用療法が中枢神経転移に対して有効性を示す
2023年07月14日、医学誌『The Lancet Oncology』にて中枢神経系転移のある悪性黒色腫(メラノーマ)に対する抗PD-L1抗体薬アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)+BRAF阻害薬ベムラフェニブ(製品名:ゼルボラフ)+MEK阻害薬コビメチニブ併用療法の有効性、安全性を検証した第2相のTRICOTEL試験(NCT03625141)の結果がUniversity Hospital ZürichのReinhard Dummer氏らにより公表された。
TRICOTEL試験は、中枢神経系転移のある悪性黒色腫に対して、BRAFV600遺伝子変異陰性コホートでは、28日を1サイクルとして1,15日目にテセントリク840mg+ 1-21日目に1日1回コビメチニブ60mg併用療法を実施する群(N=15人)、BRAFV600遺伝子変異陽性コホートでは、28日を1サイクルとして1,15日目にテセントリク840mg+1日2回ベムラフェニブ720mg+1-21日目に1日1回コビメチニブ60mg併用療法を実施する群(N=65人)に分け、主要評価項目として頭蓋内客観的奏効率(ORR)を検証した多施設共同オープンラベル短群の第2相試験である。
本試験の結果、主要評価項目である頭蓋内ORRはBRAFV600遺伝子変異陽性群で42%(95%信頼区間:29%-54%)、BRAFV600遺伝子変異陰性群で27%(95%信頼区間:8%-55%)を示した。
一方の安全性として、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はBRAFV600遺伝子変異陽性群で68%(N=41/60人)を示し、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)はリパーゼ増加25%、血中クレアチンホスホキナーゼ増加18%であった。グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はBRAFV600遺伝子変異陰性群で53%(N=8/15人)を示し、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は貧血13%、ざ瘡様皮疹13%であった。
また、重篤な治療関連有害事象(TRAE)発症率はそれぞれBRAFV600遺伝子変異陽性群で13%、BRAFV600遺伝子変異陰性群で13%を示し、治療関連有害事象(TRAE)による死亡は確認されなかった。
以上のTRICOTEL試験の結果よりReinhard Dummer氏らは、「中枢神経系転移のあるBRAFV600遺伝子変異陽性の悪性黒色腫に対する抗PD-L1抗体薬アテゾリズマブ+BRAF阻害薬ベムラフェニブ+MEK阻害薬コビメチニブ併用療法は、中枢神経系の病変に対して効果を示しました」と結論付けている。
tezolizumab, vemurafenib, and cobimetinib in patients with melanoma with CNS metastases (TRICOTEL)(Lancet Oncol. 2023. DOI:https://doi.org/10.1016/S1470-2045(23)00334-0)あなたは医師ですか。