前治療歴のある転移性去勢抵抗性前立腺がんに対するキイトルーダ+リムパーザ併用療法、予後を改善せずJournal of Clinical Oncologyより


  • [公開日]2023.06.21
  • [最終更新日]2023.06.21
この記事の3つのポイント
前治療歴のある転移性去勢抵抗性前立腺がんを対象とした無作為化オープンラベル第3相試験
ペムブロリズマブオラパリブ併用療法と新規ホルモン療法有効性安全性を比較検証
・ペムブロリズマブとオラパリブの併用により、無増悪生存期間全生存期間は改善せず

2023年6月8日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて、前治療歴のある転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対して抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ)+PARP阻害薬であるオラパリブ(製品名:リムパーザ)併用療法の有効性、安全性を検証した第3相のKEYLYNK-010試験の結果が、Johns Hopkins Sidney Kimmel Comprehensive Cancer CenterのEmmanuel S. Antonarakis氏らにより公表された。

現在のmCRPCに対する初回治療の標準治療は、アビラテロン、エンザルタミド等の新規ホルモン治療薬+ドセタキセル併用療法である。しかしながら、複数治療歴のあるmCRPCに関しては、生存期間延長につながる確立された治療法がないという課題がある。

ペムブロリズマブ+オラパリブ併用療法は、第1/2相のKEYNOTE-365試験(NCT02861573)にてドセタキセル療法後に病勢進行したmCRPCに対して有効性が確認されている。その治療成績は病勢コントロール率DCR)が26.5%(95%信頼区間:18.2%-36.1%)、無増悪生存期間(PFS)の中央値は5.2ヶ月(95%信頼区間:4.1-6.5ヶ月)、12ヶ月PFSは28.8%、OS中央値は14.4ヶ月(95%信頼区間:10.4-17.9ヶ月)、12ヶ月OSは55.9%を示している。

このような背景に基づき、KEYLYNK-010試験は、ドセタキセル+アビラテロンもしくはエンザルタミの併用治療後に増悪が見られたmCRPCを対象に、ペムブロリズマブ+オラパリブ併用療法を実施する群、もしくは新規ホルモン療法であるアビラテロンまたはエンザルタミド単剤療法を実施する群に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として画像診断による無増悪生存期間(rPFS)、全生存期間(OS)、副次評価項目として安全性、客観的奏効率ORR)などを比較検証した第3相試験である。

本試験の結果、主要評価項目であるrPFSの中央値は、ペムブロリズマブ+オラパリブ併用群の4.4ヶ月(95%信頼区間:4.2-6.0ヶ月)に対して新規ホルモン療法群で群4.2ヶ月(95%信頼区間:4.0-6.1ヶ月)と、ペムブロリズマブ+オラパリブ併用群で病勢進行または死亡のリスクが2%増加(HR:1.02,95%信頼区間:0.82-1.25,P=0.55)した。

OSの中央値はペムブロリズマブ+オラパリブ併用群の15.8ヶ月(95%信頼区間:14.6-17.0ヶ月)に対して新規ホルモン療法群で14.6ヶ月(95%信頼区間:12.6-17.3ヶ月)と、ペムブロリズマブ+オラパリブ併用群で死亡のリスクが14%減少(HR:0.94,95%信頼区間:0.77-1.14,P=0.26)した。

副次評価項目であるORRは、ペムブロリズマブ+オラパリブ併用群の16.8%に対して新規ホルモン療法群で5.9%と、ペムブロリズマブ+オラパリブ併用群で改善傾向が見られた。一方の安全性として、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はペムブロリズマブ+オラパリブ併用群の34.6%に対して新規ホルモン療法群で9.0%をそれぞれ示した。

以上のKEYLYNK-010試験の結果よりEmmanuel S. Antonarakis氏らは「アビラテロンもしくはエンザルタミド+ドセタキセル併用療法中もしくは併用療法後に病勢進行したmCRPCに対する抗PD-1抗体薬ペムブロリズマブ+PARP阻害薬オラパリブ併用療法は、アビラテロンもしくはエンザルタミド単剤療法に比べて画像診断による無増悪生存期間(rPFS)、全生存期間(OS)を統計学的有意には改善しませんでした」と述べている。

Pembrolizumab Plus Olaparib for Patients With Previously Treated and Biomarker-Unselected Metastatic Castration-Resistant Prostate Cancer: The Randomized, Open-Label, Phase III KEYLYNK-010 Trial(Journal of Clinical Oncology 2023; DOI: 10.1200/JCO.23.00233)

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