この記事の3つのポイント
・内分泌療法中もしくは治療後に再発または増悪したホルモン受容体陽性、HER2陰性の進行乳がんを対象とした第3相試験
・内分泌療法としてのフルベストラントとAKT阻害剤カピバセルチブの併用療法の有効性と安全性を検証
・フルベストラント単剤と比較して、カピバセルチブ+フルベストラント併用療法は無増悪生存期間を有意に改善
2023年6月1日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害薬併用の有無を問わず、内分泌療法に抵抗性を示したホルモン受容体陽性HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)陰性の進行乳がんを対象とした第3相試験(NCT04305496)の結果がInstitute of Cancer Research and Royal MarsdenのNicholas C. Turner氏らにより公表された。
本試験が開始された背景として、AKT経路活性化は内分泌療法の抵抗性に関係している可能性が示唆されている。カピバセルチブは3つのAKTアイソフォーム(AKT1/2/3)の強力な選択的アデノシン三リン酸(ATP)競合阻害薬であり、AKT経路(PI3K/AKT/PTEN)に変異を有する腫瘍に対して有用性が示されている。しかしながら、ホルモン受容体陽性進行性乳がん患者に対する内分泌療法へのAKT阻害薬の追加の有効性・安全性に関しては限られたデータしか出ていなかった。
本試験は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害薬併用の有無を問わず、内分泌療法(アロマターゼ阻害剤による治療)中もしくは治療後に再発または増悪したホルモン受容体陽性HER2陰性の局所進行性または転移性乳がんに対して、内分泌療法としてのフルベストラント(製品名:フェソロデックス)単剤群と、フルベストラント+AKT阻害薬であるカピバセルチブの併用療法群に1対1の割合で無作為に振り分け、有効性・安全性を比較検証したもの。主要評価項目は、主治医評価判定による全患者群の無増悪生存期間(PFS)、AKT経路変異(PI3K/AKT/PTEN)患者群におけるPFS、副次評価項目は全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)などとなっている。
本試験の結果、主要評価項目である全患者群におけるPFSの中央値は、フルベストラント+カピバセルチブ併用群で7.2ヶ月であったのに対しフルベストラント単剤群では3.6ヶ月と、カピバセルチブとの併用群で病勢進行または死亡のリスクが40%(HR:0.60,95%信頼区間:0.51-0.71,P<0.001)減少した。
AKT経路変異(PIK3CA、AKT1、PTEN)患者群におけるPFSの中央値は、フルベストラント+カピバセルチブ併用群の7.3ヶ月に対してフルベストラント単剤群で3.1ヶ月と、併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクが50%(HR:0.50,95%信頼区間:0.38-0.65,P<0.001)減少した。
一方グレード3以上の有害事象(AE)としては皮膚障害があり、フルベストラント+カピバセルチブ併用群において12.1%、フルベストラント単剤群において0.3%で発現がみらた。また下痢は併用群の9.3%に対して単剤群で0.3%を示した。有害事象(AE)による治療中止率は併用群の13.0%に対し単剤群で2.3%を示した。
以上の第3相試験の結果より、Nicholas C. Turner氏らは、「アロマターゼ阻害薬による治療中に病勢進行したホルモン受容体陽性HER2陰性の局所進行性/転移性乳がん患者に対し、フルベストラントとAKT阻害薬であるカピバセルチブ併用療法は、無増悪生存期間を統計学的有意に改善しました」と結論付けている。
Capivasertib in Hormone Receptor–Positive Advanced Breast Cancer(N Engl J Med 2023; 388:2058-2070 DOI: 10.1056/NEJMoa2214131)あなたは医師ですか。