内分泌療法+CDK4/6阻害薬で増悪したホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がん、内分泌療法切り替え+リボシクリブで無増悪生存期間が改善Journal of Clinical Oncologyより


  • [公開日]2023.05.25
  • [最終更新日]2023.05.24
この記事の3つのポイント
内分泌療法CDK4/6阻害薬後に増悪したホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がんを対象とした第2相試験
・増悪前と異なる内分泌療法単独またはリボシクリブとの併用療法有効性安全性を比較検証
・増悪前と異なる内分泌療法+リボシクリブ併用療法により無増悪生存期間を有意に改善

2023年5月19日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がん患者に対するサイクリン依存性キナーゼ4/6(CDK4/6)阻害薬継続投与+内分泌療法の切り替え療法の有効性、安全性を検証した第2相のMAINTAIN試験(NCT02632045)の結果がWinship Cancer InstituteのKevin Kalinsky氏らにより公表された。

MAINTAIN試験とは、ホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がんにおいて、CDK4/6阻害薬+内分泌療法による治療後病勢進行した症例に対し、増悪前と異なる種類の内分泌療法単独群またはCDK4/6阻害剤であるリボシクリブとの併用療法群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)を比較検証した二重盲検下プラセボ対照の第2相試験である。

ホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がん患者に対するCDK4/6阻害薬+内分泌療法は、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間OS)を改善することが示されている。しかしながら、CDK4/64/6阻害薬+内分泌療法の治療中に病勢進行した患者に対して、CDK4/6阻害薬を継続投与しつつ内分泌療法を切り替える治療法の有用性を示したランダム化試験は存在しない。
以上の背景より、ホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がん患者に対するCDK4/6阻害薬+切り替え内分泌療法療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。

本試験に登録された119人の患者のうち、増悪前に使用していたCDK4/6阻害薬の種類はリボシクリブが11.7%(N=14人)、パルボシクリブが86.5%(N=103人)である。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。

主要評価項目であるPFSの中央値はリボシクリブ+切り替え内分泌療法群の5.29ヶ月(95%信頼区間:3.02-8.12ヶ月)に対して切り替え内分泌療法単独群で2.76ヶ月(95%信頼区間:2.66-3.25ヶ月)と、リボシクリブ+切り替え内分泌療法併用群において病勢進行または死亡のリスクは43%(HR:0.57,95%信頼区間:0.39-0.85,P=0.006)減少した。

また、6ヶ月PFSはリボシクリブ+切り替え内分泌療法併用群の41.2%に対して切り替え内分泌療法単独群で24.6%、12ヶ月PFSは併用群の23.9%に対して単独群で7.4%をそれぞれ示した。

以上のMAINTAIN試験の結果よりKevin Kalinsky氏らは、「ホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がんにおいて、CDK4/6阻害剤+内分泌療法により病勢進行後、CDK4/6阻害剤であるリボシクリブと切り替え内分泌療法を併用することによって、PFSを改善することが示された」と結論を述べている。

Randomized Phase II Trial of Endocrine Therapy With or Without Ribociclib After Progression on Cyclin-Dependent Kinase 4/6 Inhibition in Hormone Receptor–Positive, Human Epidermal Growth Factor Receptor 2–Negative Metastatic Breast Cancer: MAINTAIN Trial(Journal of Clinical Oncology 2023; DOI:10.1200/JCO.22.02392)

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