難治性RAS遺伝子野生型の転移性大腸がんに対する抗EGFR抗体再投与としてのパニツムマブとトリフルリジン・チピラシルの併用療法、無増悪生存期間を改善JANA Oncologyより


  • [公開日]2023.05.24
  • [最終更新日]2023.05.23
この記事の3つのポイント
・難治性RAS遺伝子野生型の転移性大腸がんを対象とした第2相試験
・抗EGFR抗体薬の再投与としてのパニツムマブ+トリフルリジン・チピラシルと標準治療であるトリフルリジン・チピラシルの有効性安全性を比較検証
・パニツムマブ+トリフルリジン・チピラシルは、トリフルリジン・チピラシル単独と比較して無増悪生存期間を有意に改善

2023年5月18日、医学誌『JAMA Oncology』にて、難治性RAS遺伝子野生型の再発難治性大腸がんに対する三次治療としての抗EGFR抗体薬であるパニツムマブ(商品名:ベクティビックス)と標準療法であるトリフルリジン・チピラシル(商品名:ロンサーフ)の併用療法の有効性、安全性を検証した第2相のVELO試験(NCT05468892)の結果がUniversità Degli Studi Della Campania “Luigi Vanvitelli”のStefania Napolitano氏らにより公表された。

VELO試験とは、一次において化学療法+抗EGFR抗体薬で部分奏効または完全奏効し、二次治療で抗EGFR抗体薬不使用の期間が4カ月以上あったRAS遺伝子野生型の転移性大腸がんに対する三次治療として、パニツムマブ+トリフルリジン・チピラシル併用療法を投与する群、もしくはトリフルリジン・チピラシル単剤療法を投与する群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)を比較検証したオープンラベルランダム化の第2相試験である。

RAS遺伝子野生型転移性大腸がん患者に対する初回治療の標準療法は、抗EGFRモノクローナル抗体薬であるセツキシマブ(商品名:アービタックス)またはパニツムマブと化学療法の併用療法であるが、がんの進行とともに耐性を持った細胞ができてくる。しかしながら、二次治療において抗EGFR抗体薬以外の薬剤を使用することで、再び抗EGFR抗体薬に感受性を持った細胞が増えてくるとされている。そのため、一時治療で抗EGFRモノクローナル抗体薬に奏効を示したRAS遺伝子野生型の再発難治性大腸がんの三次治療として、抗EGFRモノクローナル抗体薬の再投与が提案されている。以上の背景から、三次治療としての抗EGFR抗体薬の再投与の有効性を検証する目的で、本試験が開始された。

本試験に登録された62人の患者背景は下記の通りである。年齢中央値はパニツムマブ+トリフルリジン・チピラシル併用群の65歳(39-81歳)に対してトリフルリジン・チピラシル単剤群で66歳(32-82歳)。性別は男性が併用群の61.3%(N=19人)に対して単剤群で54.8%(N=17人)。

結果は下記の通りである。
主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の中央値は、パニツムマブ+トリフルリジン・チピラシル併用群の4.0ヶ月(95%信頼区間:2.8-5.3ヶ月)に対してトリフルリジン・チピラシル単剤群で2.5ヶ月(95%信頼区間:1.4-3.6ヶ月)と、併用群において病勢進行または死亡のリスクが52%(HR:0.48,95%信頼区間:0.28-0.82,P=0.007)改善された。6ヶ月無増悪生存期間(PFS)は、パニツムマブ+トリフルリジン・チピラシル併用群の38.5%に対してトリフルリジン・チピラシル単剤群で13.0%、12ヶ月無増悪生存期間(PFS)は併用群の15.4%に対して単剤群で0%を示した。

以上のVELO試験の結果より、Stefania Napolitano氏らは、「一次治療として抗EGFR抗体薬に奏効を示したRAS遺伝子野生型の再発難治性大腸がんに対する三次治療としての抗EGFR抗体薬であるパニツムマブと標準療法であるトリフルリジン・チピラシルの併用療法は、トリフルリジン・チピラシル単剤療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善しました」と結論を述べている。

Panitumumab Plus Trifluridine-Tipiracil as Anti–Epidermal Growth Factor Receptor Rechallenge Therapy for Refractory RAS Wild-Type Metastatic Colorectal Cancer(JAMA Oncology 2023; DOI: doi:10.1001/jamaoncol.2023.0655)

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