4月27日、庄内地域産業振興センター、国立がん研究センター、東京大学、九州大学および広島大学の研究グルーブは、AF10融合タンパク質が悪性の白血病を引き起こすメカニズムを解明したと発表した。
これまでに同研究グルーブは、MLLやMOZといった遺伝子がDOT1Lというタンパク質などと協調的に作用し、遺伝子の発現を活性化するメカニズムを明らかにしてきた。MLLやMOZは「CG」という配列を多く含む遺伝子プロモーターに結合して、DOT1LとENLの複合体や、ENLがAF4やP-TEFbと結合して生成された複合体を呼び込むことで、遺伝子からRNAを産生する転写を活性化する。MLLやMOZの変異がこの転写経路の異常活性を促進することで白血病細胞が限りなく増殖する。
AF10遺伝子もさまざまな遺伝子と融合して悪性度の高い白血病を引き起こすことが知られている。AF10にもDOT1Lと結合する構造があることから、MLLやMOZの変異と同様に転写経路を活性化すると考えられている。しかしながら、AF10融合タンパク質とDOT1やENLというタンパク質との結合が重要な理由は解明されていなかった。
今回の研究では、まずAF10融合遺伝子の代表的な遺伝子であるCALM-AF10融合遺伝子の構造を改変した人工遺伝子を作成。その結果、ENLに含まれるYEATSドメインという構造が発がんドライバーの機能を果たしていることが見出された。
これまでに同研究グループは、ENLがYEATSドメインを介して、MOZやそれとよく似たMORFと結合することを明らかにしていた。今回、CALM-AF10白血病細胞のMOZ/MORF遺伝子をノックアウトした結果、白血病細胞の増殖が抑制。白血病マウスにMOZ/MORFの酵素活性阻害する薬剤を投与したところ、白血病細胞の著しい減少を認め、病勢進行を抑えることに成功したという。
また、MOZ/MORF阻害剤を投与すると、CALM-AF10が標的遺伝子の領域から解離され、標的遺伝子の転写は不活化された。さらに、DOT1Lに対する阻害剤との併用で、より高い抗腫瘍効果が示された。 (画像はリリースより)
以上の結果より、MOZ/MORF阻害剤はCALM-AF10を標的とする分子標的薬となり、白血病に対する効果的な治療薬となりうること、MOZ/MORF阻害剤の単剤療法もしくは併用療法で高い有効性を示すことが示唆された。プレスリリースでは「現時点では臨床現場で使用可能なMOZ/MORF阻害剤はありません。本研究を受けて、今後臨床で応用可能なMOZ/MORF阻害剤へと改良され、難治性の白血病に対する効果的な治療法の開発が進むことが期待されます」と、今後の展望が述べている。
白血病とは 白血病は、血液がんのひとつであり、乳児を含む若年層でもっとも多く見られるがん。染色体が再配列する際に異なる断片同士で結合する染色体転座により、融合タンパク質が発現することで、正常の造血細胞が無限に増殖するようになり、白血病を引き起こす。中には現在選択可能な治療法では治癒が難しいタイプも存在する。
参照元:国立がん研究センター プレスリリース