4月17日、医学誌『The Lancet Oncology』にて進行性/転移性食道扁平上皮がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-1抗体薬であるTislelizumab(チスレリズマブ)+主治医選択の化学療法の有効性、安全性をプラセボ+主治医選択の化学療法と比較検証した第3相のRATIONALE-306試験(NCT03783442)の結果がChinese PLA General HospitalのJianming Xu氏らにより公表された。
RATIONALE-306試験は、進行性/転移性食道扁平上皮がん患者(N=649人)に対するファーストライン治療として3週を1サイクルとしてチスレリズマブ200mg+主治医選択の化学療法(シスプラチンもしくはオキサリプラチンとフルオロウラシル、カペシタビンもしくはパクリタキセルのタブレット療法)を病勢進行もしくは予期せぬ有害事象(AE)が発現するまで投与する群(N=326人)、もしくはプラセボ+主治医選択の化学療法を病勢進行もしくは予期せぬ有害事象(AE)が発現するまで投与する群(N=323人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、その他評価項目として無増悪生存期間(PFS)、奏効持続期間(DOR)、客観的奏効率(ORR)、安全性などを比較検証した国際多施設共同二重盲検下プラセボ対照の第3相試験である。
本試験が開始された背景として、進行性/転移性食道扁平上皮がん患者に対するファーストラインの標準治療の選択肢は限られており予後は不良である。抗PD-1抗体薬であるチスレリズマブは治療歴のある進行性/転移性食道扁平上皮がんに対して良好な抗腫瘍効果を示している。以上の背景より、進行性/転移性食道扁平上皮がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-1抗体薬であるチスレリズマブ+主治医選択の化学療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験に登録された患者の年齢中央値は64歳(範囲:59-69歳)、性別は男性87%(N=563人)、女性13%(N=86人)。人種はアジア人75%(N=486人)、白人24%(N=155人)。以上の背景を有する患者に対するフォローアップ期間中央値16.3ヶ月時点における結果は下記の通りである。
主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はチスレリズマブ+主治医選択の化学療法群17.2ヶ月(95%信頼区間:15.8-20.1ヶ月)に対してプラセボ+主治医選択の化学療法群10.6ヶ月(95%信頼区間:9.3-12.1ヶ月)、プラセボ+主治医選択の化学療法群に比べてチスレリズマブ+主治医選択の化学療法群で死亡(OS)のリスクを34%減少(HR:0.66、95%信頼区間:0.54-0.80、P<0.0001)した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3もしくは4の治療関連有害事象(TRAE)は 好中球数減少でチスレリズマブ+主治医選択の化学療法群31%(N=99人)に対してプラセボ+主治医選択の化学療法群33%(N=105人)、白血球数減少で11%(N=35人)に対して16%(N=50人)、貧血で15%(N=47人)に対して13%(N=41人)であった。チスレリズマブ+主治医選択の化学療法群で死亡は6人の患者で確認され、その内訳は消化管出血2人、心筋炎1人、肺結核1人、電解質異常1人、呼吸不全1人であった。
以上のRATIONALE-306試験の結果よりJianming Xu氏らは「進行性/転移性食道扁平上皮がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-1抗体薬であるチスレリズマブ+主治医選択の化学療法は、プラセボ+主治医選択の化学療法群に比べて全生存期間(OS)を改善し、有害事象(AE)も管理可能な内容でした」と結論を述べている。
Tislelizumab plus chemotherapy versus placebo plus chemotherapy as first-line treatment for advanced or metastatic oesophageal squamous cell carcinoma (RATIONALE-306): a global, randomised, placebo-controlled, phase 3 study(Lancet Oncol. 2023 Apr 17;S1470-2045(23)00108-0. doi: 10.1016/S1470-2045(23)00108-0.)