4月27日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にてKMT2A陽性の急性リンパ芽球性白血病(KMT2A-R ALL)の乳児に対する化学療法への追加投与としての抗悪性腫瘍剤/二重特異性抗体薬であるビーリンサイト(一般名:ブリナツモマブ、以下ビーリンサイト)単剤療法の有効性、安全性を検証した試験の結果がthe Princess Máxima Center for Pediatric OncologyのInge M. van der Sluis氏らにより公表された。
本試験は、KMT2A陽性の急性リンパ芽球性白血病(KMT2A-R ALL)と診断された1歳未満の患者(N=30人)に対して化学療法を投与後、ビーリンサイトを体表面積当たり15μg/日28日間連続注入し、主要評価項目としてビーリンサイト治療に関連した有害事象(TRAE:ビーリンサイトの有害事象による治療中止、死亡として定義)を検証した試験である。
本試験が開始された背景として、乳幼児のKMT2A再構成のある急性リンパ性白血病(KMT2A-R ALL)の3年無イベント生存率は40%を下回り、診断より1年以内で3分の2の患者、2年以内で90%の患者が再発する。以上のように乳幼児のKMT2A陽性の急性リンパ芽球性白血病(KMT2A-R ALL)は予後が不要であるにも関わらず、ここ数十年間治療成績が向上していない。以上の背景より、本試験が開始された。
本試験のフォローアップ期間中央値26.3ヶ月(範囲:3.9~48.2ヶ月)時点における結果、主要評価項目で定義されたビーリンサイトの治療に関連した治療中止、死亡に至る有害事象(TRAE)は発生しなかった。重篤な有害事象(SAE)発症率は発熱4人、感染症4人、高血圧1人、嘔吐1人の患者で確認された。
2年無病生存率は過去のInterfant-06試験で49.4%(95%信頼区間:42.5~56.0%)に対して、本試験では81.6%(95%信頼区間:60.8~92.0%)を示した。
以上の試験における結果、Inge M. van der Sluis氏らは「KMT2A陽性の急性リンパ芽球性白血病(KMT2A-R ALL)乳児患者に対する化学療法への追加投与としての抗悪性腫瘍剤/二重特異性抗体薬ビーリンサイトは、過去の臨床試験のデータに比べて高率な無病生存率を示し、安全性も良好でした」と結論を述べている。
Blinatumomab Added to Chemotherapy in Infant Lymphoblastic Leukemia(N Engl J Med. 2023 Apr 27;388(17):1572-1581. doi: 10.1056/NEJMoa2214171.)