成人T細胞白血病リンパ腫に対する新たな予後予測モデルの開発に成功ー宮崎大学らー


  • [公開日]2023.04.17
  • [最終更新日]2023.04.14

4月7日、宮崎大学は、成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)のゲノム情報と臨床情報を統合した新たな予後予測モデルの開発に成功したと発表した。

ATLの主な治療法は多剤併用化学療法、抗CCR4抗体療法、造血幹細胞移植であるが、造血幹細胞移植は合併症や移植関連死亡が問題となっている。また、ATLの病勢評価にATL-prognostic index(ATL-PI)と呼ばれる予後予測モデルが用いられているが、どのような症例において多剤併用化学療法のみで良好な治療効果が期待できるのかを予測することは難しく、治療選択の際に活用するには課題が残されていた。そのため、治療選択の際に役に立つ新規の予後予測モデルの開発が望まれていた。

今回の研究は、造血幹細胞移植療法の対象となる70歳未満のATL患者(N=183人)を対象に、ATLで高頻度に認められる遺伝子変異の情報やATL-PIのステータスを統合した情報を分析し、新たな予後予測モデル(m7-ATLPI)の作成と検証を行った。

その結果、従来の予後予測モデルであるATL-PIにて低リスク群と判定された予後良好群の約4割に当たる、さらに予後の良い群(m7-ALTPIで低リスク群)を精密に同定することが可能となった。これにより、m7-ATL-PIで低リスク群は、標準的な多剤併用化学療法を選択することが長期生存につながると期待できる。一方、m7-ATLPIで中/高リスクと判定された患者においては、造血幹細胞移植などの代替療法が有効である可能性が示唆された。


(画像はリリースより)

今回の研究の展望として、リリースでは「本研究の成果は、ATL患者さんの個別化医療の推進、予後の改善、およびQOL向上につながると期待されます。また、今後、本研究の成果が治療最適化のみならず、新たな治療法開発の基盤となることが期待されます」と述べられている。

なお、今回の研究は宮崎大学医学部内科学講座血液・糖尿病・内分泌内科学分野の下田和哉教授、亀田拓郎助教らの研究グループと、京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学講座の小川誠司教授、国立がん研究センター研究所分子腫瘍学分野の片岡圭亮分野長、今村総合病院の宇都宮與名誉院長兼臨床研究センター長、熊本医療センターの日高道弘副院長らと共同で行われた。詳細な結果は、伊医学誌「Haematologica」に2月16日付で公表(Early view)されている。

成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)とは
ATLは難治性の血液がんでヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の感染が原因で発症する。ATLの発症には50種類以上の遺伝子異常が関与しているといわれており、がん化したHTLV-1感染リンパ球が増殖するとリンパ節腫大などのあらゆる症状を呈する。HTLV-1の流行地域である日本、アフリカ、カリブ海沿岸諸国などで多くみられる。

ATL-prognostic index(ATL-PI)とは
ATL-prognostic indexは、同種造血幹細胞移植を受けなかった急性型とリンパ腫型ATL患者の予後を評価するための指標のひとつ。年齢、ステージパフォーマンスステータス、血清アルブミン値、血清可溶性インターロイキン2受容体値の5つの臨床情報から算出される。

参照元:
宮崎大学 ニュースリリース

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