4月3日、国立がん研究センターは、小児とAYA世代でEZH2阻害薬の有効性が期待された難治性固形がんなどに対して、EZH2阻害薬の患者申出療養制度を用いた医師主導臨床試験を行うと発表した。
今回の患者申出療養制度を用いた臨床研究が開始は、国立がん研究センター中央病院に通院する患者による申出が背景にあるという。小児やAYA世代の固形がんに対する初発時の治療法は、がん腫ごとに確立している。一方で、標準治療がない、もしくは治療抵抗性を示す患者は年間約400人存在する。しかしながら、この人数では大規模な臨床試験が実施できないため標準治療の確立にはつながらない。再発した場合は、がん腫に関係なく同じような治療が行われたり、緩和治療が推奨されたりするなど、選択肢は限局的である。
EZH2阻害薬は、米国においてはFDAが承認した検査でEZH2変異陽性を認めた、「少なくとも2種類の全身療法を受けた再発/難治性の濾胞性リンパ腫の成人」、「十分な代替治療法がない再発/難治性の濾胞性リンパ腫の成人」、「16歳以上の完全切除ができない転移性/局所進行性の類上皮肉腫」に対する治療薬として薬事承認されているが、日本においては「成人の再発又は難治性のEZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫(標準的な治療が困難な場合に限る)」に対してのみ承認を取得している。そこで、日本においても小児・AYA世代の患者が保険診療下でEZH2阻害薬を使用できるようにするため、同研究が計画されたとしている。
今回の医師主導臨床試験では、標準治療がない、もしくは治療抵抗性の6ヶ月以上29歳以下の小児・AYA世代の悪性固形がん患者を対象にタゼメトスタットを投与した際の有効性と安全性を検証する。最大参加患者数は10人を予定している。タゼメトスタットは開発元であるエーザイ株式会社より提供される。
なお、今回の対象となるがん腫は、固形がんのほかラブドイド腫瘍、類上皮肉腫、滑膜肉腫、脊索腫などである。
国立がん研究センターは、リリースにて「治療開発が十分に進んでおらず、諸外国とのドラッグラグが生じている小児・AYA世代のがんについて、ドラッグアクセスの改善を目指します」と展望について述べている。
タゼメトスタットとは タゼメトスタットとはEZH2(enhancer of zeste homolog)阻害薬である。EZH2はヒストンなどのメチル基転移酵素であり、これらのメチル化活性を阻害することで、細胞周期停止やアポトーシスを誘導し、腫瘍増殖を抑制すると考えられている。タゼメトスタットは、野生型EZH2および変異型EZH2(Y646F)のメチル化を阻害する。
患者申出療養制度とは 患者申出療養は、未承認薬などを保険外併用療養として迅速に使用したいという患者の思いに応え、患者からの申出を契機に安全性や有効性などを確認しつつ、可能な限り身近な医療機関で治療を受けられるようにする制度である。これらのデータは将来的に保険適用につなげるための科学的根拠として集積され、評価される。
参照元:国立がん研究センター プレスリリース