3月30日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて転移性去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)患者に対するアンドロゲン受容体(AR)シグナル伝達阻害薬であるイクスタンジ(一般名:エンザルタミド、以下イクスタンジ)単剤療法、イクスタンジ+CYP17阻害薬であるザイティガ(一般名:アビラテロン、以下ザイティガ)+プレドニゾン併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のAlliance A031201試験(NCT01949337)の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのMichael J. Morris氏らにより公表された。
Alliance A031201試験とは、転移性去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)患者(N=1311人)に対するファーストライン治療として1日1回イクスタンジ160mg単剤療法を病勢進行もしくは予期せぬ有害事象(AE)が発現するまで投与する群(N=657人)、1日1回イクスタンジ160mg+1日1回ザイティガ1,0000mg+1日2回プレドニゾン5mg併用療法を病勢進行もしくは予期せぬ有害事象(AE)が発現するまで投与する群(N=654人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、その他評価項目として安全性、画像診断による無増悪生存期間(rPFS)などを検証した第3相試験である。
本試験が開始された背景として、イクスタンジとザイティガはどちらもアンドロゲン受容体のシグナル伝達を標的とする薬剤であるが、そのメカニズムは異なる。また、一方の薬剤の作用機序がもう一方の薬剤の耐性経路を打ち消す可能性が示唆されている。以上の背景より、転移性去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)患者に対するアンドロゲン受容体(AR)シグナル伝達阻害薬イクスタンジの上乗せ効果の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験の結果、主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はイクスタンジ単剤群32.7ヶ月(95%信頼区間:30.5-35.4ヶ月)に対してイクスタンジ+ザイティガ+プレドニゾン併用群34.2ヶ月(95%信頼区間:31.4-37.3ヶ月)、イクスタンジ単剤群に比べてイクスタンジ+ザイティガ+プレドニゾン併用群で死亡(OS)のリスクを11%減少(HR:0.89、P=0.03)するも両群間で統計学的有意な差は確認されなかった。
その他評価項目である画像診断による無増悪生存期間(rPFS)中央値はイクスタンジ単剤群21.3ヶ月(95%信頼区間:19.4-22.9ヶ月)に対してイクスタンジ+ザイティガ+プレドニゾン併用群24.3ヶ月(95%信頼区間:22.3-26.7ヶ月)、イクスタンジ単剤群に比べてイクスタンジ+ザイティガ+プレドニゾン併用群で画像診断による病勢進行または死亡(rPFS)のリスクを14%減少(HR:0.86、P=0.02)した。
一方、安全性として、ザイティガの薬物動態学的クリアランスは、イクスタンジ+ザイティガ+プレドニゾン併用療法の場合、ザイティガ単独で報告されているクリアランス値と比較して2.2~2.9倍高くなった。
以上の第3相のAlliance A031201試験の結果より、Michael J. Morris氏らは「転移性去勢抵抗性前立腺がんに対してアンドロゲン受容体(AR)シグナル伝達阻害薬であるイクスタンジにCYP17阻害薬であるザイティガを追加しても全生存期間(OS)は統計学的有意に改善しませんでした。ザイティガのクリアランス値の増加はイクスタンジとザイティガの相互作用が一因であると考えられ、それを防ぐことができませんでした」と結論を述べている。
Randomized Phase III Study of Enzalutamide Compared With Enzalutamide Plus Abiraterone for Metastatic Castration-Resistant Prostate Cancer (Alliance A031201 Trial)(J Clin Oncol. 2023 Mar 30;JCO2202394. doi: 10.1200/JCO.22.02394.)