再発/難治性多発性骨髄腫に対するBCMA標的CAR-T細胞療法イデカブタゲン ビクルユーセル、無増悪生存期間を延長The New England Journal of Medicineより


  • [公開日]2023.03.31
  • [最終更新日]2023.03.30
この記事の3つのポイント
・複数治療歴のある再発/難治性多発性骨髄腫患者が対象の第3相試験
CAR-T細胞療法のイデカブタゲン ビクルユーセルの有効性安全性標準治療と比較検証
無増悪生存期間はイデカブタゲン ビクルユーセル群13.3ヶ月を示し、標準治療群(4.4ヶ月)に対して統計学的有意に延長を認めた

3月16日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて前治療歴が2~4レジメンの再発/難治性多発性骨髄腫(R/RMM)患者に対するB細胞成熟抗原(BCMA)標的キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬であるイデカブタゲン ビクルユーセル(idecabtagene vicleucel)の有用性、安全性を比較検証した第3相のKarMMa-3試験(NCT03651128)の結果がClínica Universidad de NavarraのPaula Rodriguez-Otero氏らにより公表された。

KarMMa-3試験は、前治療歴が2~4レジメンの再発/難治性多発性骨髄腫(R/RMM)患者(N=386人)に対してイデカブタゲン ビクルユーセルを投与する群(CAR陽性細胞150×10 6~450×10 6)(N=254人)、もしくは標準治療(ダラツムマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン併用療法、ダラツムマブ+ボルテゾミブ+デキサメタゾン併用療法、イキサゾミブレナリドミド+デキサメタゾン併用療法、カルフィルゾミブ+デキサメタゾン併用療法、エロツズマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン併用療法)を投与する群(N=132人)に2対1の割合で無作為に割り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、重要な副次評価項目として客観的奏効率ORR)、全生存期間OS)を比較検証した国際多施設共同オープンラベルの第3相試験である。

本試験が開始された背景として、多発性骨髄腫の標準治療は免疫調節薬、プロテアソーム阻害剤、抗CD38モノクローナル抗体薬などが挙げられるが、これら3つ以上の治療薬に対して治療抵抗性、難治性を示した多発性骨髄腫患者の予後は不良であり、標準治療が確立されていない。以上の背景より、再発/難治性多発性骨髄腫(R/RMM)患者に対するB細胞成熟抗原(BCMA)標的キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬であるイデカブタゲン ビクルユーセルの有用性を検証する目的で本試験が開始された。

本試験のフォローアップ期間中央値18.6ヶ月時点における結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はイデカブタゲン ビクルユーセル群13.3ヶ月に対して標準治療群4.4ヶ月、標準治療群に比べてイデカブタゲン ビクルユーセル群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを51%(HR:0.49、95%信頼区間:0.38-0.65、P<0.001)減少した。

また、重要な副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はイデカブタゲン ビクルユーセル群71%に対して標準治療群42%を示し(P<0.001)、完全寛解率(CR)はイデカブタゲン ビクルユーセル群39%に対して標準治療5%を示した。全生存期間(OS)中央値は現時点では未成熟であった。

一方の安全性として、グレード3もしくは4の有害事象(AE)発症率はイデカブタゲン ビクルユーセル群93%に対して標準治療群75%であった。イデカブタゲン ビクルユーセル群でサイトカイン放出症候群CRS)発症率は88%であり、グレード3以上は5%の患者で確認された。

以上の第3相のKarMMa-3試験の結果より、Paula Rodriguez-Otero氏らは「前治療歴が2~4レジメンの再発/難治性多発性骨髄腫(R/RMM)患者に対するB細胞成熟抗原(BCMA)標的キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬であるイデカブタゲン ビクルユーセルは、標準治療群に対して、無増悪生存期間(PFS)ならびに客観的奏効率(ORR)を改善しました」と結論を述べている。

Ide-cel or Standard Regimens in Relapsed and Refractory Multiple Myeloma(N Engl J Med. 2023 Mar 16;388(11):1002-1014. doi: 10.1056/NEJMoa2213614. Epub 2023 Feb 10.)

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