プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法後に病勢進行した転移性尿路上皮がんに対するオプジーボ+高容量ヤーボイ併用療法、客観的奏効率33%を示すThe Lancet Oncologyより


  • [公開日]2023.03.06
  • [最終更新日]2023.03.06
この記事の3つのポイント
・プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法後に病勢進行した転移性尿路上皮がん患者が対象の第2相試験
導入療法としてのオプジーボ単剤療法、維持療法としてのオプジーボ単剤もしくはヤーボイ併用療法の有効性安全性を検証
・客観的奏効率33%、完全寛解率7%を示す

2月28日、医学誌『The Lancet Oncology』にてプラチナ系抗がん剤ベースの化学療法後に病勢進行した移行上皮がん患者に対する抗PD-1抗体薬であるオプジーボ(一般名:ニボルマブ、以下オプジーボ)±ヤーボイ(一般名:イピリムマブ、以下ヤーボイ)併用療法の有効性、安全性を検証した第2相のTITAN-TCC試験(NCT03219775)の結果がJena University HospitalのMarc-Oliver Grimm氏らにより公表された。

TITAN-TCC試験は、プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法後に病勢進行した移行上皮がん(膀胱、尿道、尿管、腎盂の組織学的に転移が確認された、または外科的に切除不能な尿路上皮がん)患者に対する導入療法として2週1サイクルでオプジーボ240mg単剤を4サイクル投与し、4サイクル投与時点で完全寛解(CR)もしくは部分寛解(PR)の奏効率を示した場合には維持療法として2週1サイクルでオプジーボ240mg単剤を投与、または4サイクル投与時点で病勢安定SD)もしくは病勢進行(PD)の奏効率を示した場合には維持療法として3週1サイクルでオプジーボ1mg/kg+ヤーボイ3mg/kg併用療法を実施し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として奏効持続期間(DOR)、無増悪生存期間PFS)などを検証した第2相試験である。

本試験が開始された背景としては、プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法後に病勢進行した移行上皮がん患者に対して、抗PD-1抗体薬オプジーボと抗CTLA-4抗体薬ヤーボイの高容量投与が治療成績の向上を示唆した研究がある。転移性尿路上皮がん患者に対する治療薬として単剤療法の有効性は他の臨床試験で示されているが、抗PD-1抗体薬もしくは抗PD-L1抗体薬単剤療法の応答性が不良である場合、早期に抗CTLA-4抗体薬のブースター投与が臨床的に有用であるかどうかを検証するため、本試験が開始された。

他の臨床試験では、第3相のIMvigor211試験(NCT02302807)ではプラチナ系抗がん剤ベースの化学療法後に病勢進行した転移尿路上皮がん患者に対する抗PD-L1抗体薬であるテセントリク(一般名:アテゾリズマブ、以下テセントリク)単剤療法と化学療法を比較検証し、両群間では全生存期間OS)の統計学的有意な差は確認されなかった。(参考:Lancet. 2018 Feb 24;391(10122):748-757. doi: 10.1016/S0140-6736(17)33297-X. Epub 2017 Dec 18.

一方で、第2相のCheckMate 275試験(NCT02387996)ではプラチナ系抗がん剤ベースの化学療法後に病勢進行した尿路上皮がん患者に対する抗PD-1抗体薬であるオプジーボ単剤療法を投与し、抗PD-L1発現率に関係なく臨床的意義のある抗腫瘍効果を示している。(参考: Lancet Oncol. 2017 Mar;18(3):312-322. doi: 10.1016/S1470-2045(17)30065-7. Epub 2017 Jan 26.

本試験には、転移性尿路上皮がん患者83名が登録され、全員がニボルマブ導入治療を受けた。うち、50名(60%)の患者が少なくとも1回、抗CTLA-4抗体薬ヤーボイのブースト投与を受けた。その結果、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は33%(N=27/83人)、完全寛解率(CR)は7%(N=6人)を示し、主要評価項目達成基準として事前設定した閾値である20%に比べて統計学的有意に高率であった。一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3もしくは4の免疫関連治療関連有害事象(irTRAE)発症は腸炎が11%、下痢が6%であった。

第2相のTITAN-TCC試験の結果より、Marc-Oliver Grimm氏らは「プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法後に病勢進行した転移性尿路上皮がん患者に対して、維持療法としてオプジーボ+ヤーボイのブースター投与は、客観的奏効率を著しく改善しました。このことは、高容量ヤーボイ3mg/kgの価値を示す結果となり、プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法後に病勢進行した転移性尿路上皮がん患者における救済戦略としての可能性を示唆します」と結論を述べている。

Tailored immunotherapy approach with nivolumab with or without ipilimumab in patients with advanced transitional cell carcinoma after platinum-based chemotherapy (TITAN-TCC): a multicentre, single-arm, phase 2 trial(Lancet Oncol. 2023 Feb 28;S1470-2045(23)00053-0. doi: 10.1016/S1470-2045(23)00053-0.)

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