PD-L1陽性の局所進行性/転移性食道扁平上皮がんに対するファーストライン治療としての抗PD-1抗体薬セルプルリマブ+シスプラチン+フルオロウラシル併用療法、無増悪生存期間と全生存期間を統計学的有意に改善naturemedicineより


  • [公開日]2023.02.22
  • [最終更新日]2023.02.22
この記事の3つのポイント
PD-L1陽性の局所進行性/転移性食道扁平上皮がん患者が対象の第3相試験
ファーストライン治療としてのセルプルリマブ+シスプラチン+フルオロウラシル併用療法有効性安全性プラセボ+シスプラチン+フルオロウラシルと比較検証
無増悪生存期間は5.8ヶ月、全生存期間は15.3ヶ月でありいずれもプラセボ群に対して統計学的有意に延長を示した

2月3日、医学誌『naturemedicine』にてPD-L1陽性の局所進行性/転移性食道扁平上皮がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-1抗体薬であるserplulimab(セルプルリマブ:HLX10)+シスプラチン+フルオロウラシル併用療法、プラセボ+シスプラチン+フルオロウラシル併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相試験(NCT03958890)の結果がChinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのYan Song氏らにより公表された。

本試験は、PD-L1陽性の局所進行性/転移性食道扁平上皮がん患者(N=551人)に対するファーストライン治療として2週を1サイクルとして1日目にセルプルリマブ(HLX10)3mg/kg+1日目にシスプラチン50mg/m2+1、2日目にフルオロウラシル1200mg/m2併用療法を実施する群(N=183人)、もしくは2週を1サイクルとして1日目にプラセボ+1日目にシスプラチン50mg/m2+1、2日目にフルオロウラシル1200mg/m2併用療法を実施する群に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、副次評価項目として客観的奏効率ORR)、奏効持続期間(DOR)などを比較検証した多施設共同ランダム化二重盲検下の第2相試験である。

本試験が開始された背景として、局所進行性/転移性食道扁平上皮がんの標準治療としてはシスプラチン+パクリタキセルなどの2剤併用化学療法が標準であるが、抗PD-1抗体薬であるオプジーボ(一般名:ニボルマブ、以下オプジーボ)、キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ、以下キイトルーダ)をはじめとした免疫チェックポイント阻害薬が近年開発され、有用性が確認されたことで局所進行性/転移性食道扁平上皮がんの標準治療としての免疫チェックポイント阻害薬が使用されるようになってきている。

例えば、進行性食道扁平上皮がん患者に対するファーストライン治療としてのオプジーボ+抗CTLA-4抗体薬であるヤーボイ(一般名:イピリムマブ、以下ヤーボイ)併用療法、オプジーボ+シスプラチン+フルオロウラシル併用療法は、シスプラチン+フルオロウラシル併用療法に比べて全生存期間(OS)を統計学的有意に改善することが第3相のCheckMate 648試験(NCT03143153)で示されている。(参考:N Engl J Med. 2022 Feb 3;386(5):449-462. doi: 10.1056/NEJMoa2111380.

また、進行性食道扁平上皮がん患者に対するファーストライン治療としてのキイトルーダ+シスプラチン+フルオロウラシル併用療法は、シスプラチン+フルオロウラシル併用療法に比べて全生存期間(OS)を統計学的有意に改善することが第3相のKEYNOTE-590試験(NCT03189719)で示されている。(参考:Lancet. 2021 Aug 28;398(10302):759-771. doi: 10.1016/S0140-6736(21)01234-4.

以上の背景より、PD-L1陽性の局所進行性/転移性食道扁平上皮がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-1抗体薬であるセルプルリマブ(HLX10)+シスプラチン+フルオロウラシル併用療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。

本試験の結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は、セルプルリマブ(HLX10)+シスプラチン+フルオロウラシル併用群の5.8ヶ月に対してプラセボ+シスプラチン+フルオロウラシル併用療法群で5.3ヶ月、セルプルリマブ(HLX10)+シスプラチン+フルオロウラシル併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを40%(HR:0.60、95%信頼区間:0.48-0.75、P<0.0001)統計学的有意に改善した。

また、もう1つの主要評価項目である全生存期間(OS)中央値は、セルプルリマブ(HLX10)+シスプラチン+フルオロウラシル併用群の15.3ヶ月に対してプラセボ+シスプラチン+フルオロウラシル併用療法群で11.8ヶ月と、セルプルリマブ(HLX10)+シスプラチン+フルオロウラシル併用群で死亡(OS)のリスクを32%(HR:0.68、95%信頼区間:0.53-0.87、P=0.0020)統計学的有意に改善した。

一方、安全性として、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は、セルプルリマブ(HLX10)+シスプラチン+フルオロウラシル併用群で53%、プラセボ+シスプラチン+フルオロウラシル併用群で48%に発生した。

以下の第3相試験の結果よりYan Song氏らは「PD-L1陽性の局所進行性/転移性食道扁平上皮がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-1抗体薬であるセルプルリマブ(HLX10)+シスプラチン+フルオロウラシル併用療法は、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を統計学的有意に改善し、管理可能な安全性プロファイルを有していました」と結論を述べている。

First-line serplulimab or placebo plus chemotherapy in PD-L1-positive esophageal squamous cell carcinoma: a randomized, double-blind phase 3 trial(Nat Med. 2023 Feb 2. doi: 10.1038/s41591-022-02179-2)

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