胆道がん根治手術後のS-1補助療法の有効性を証明、新たな標準治療として期待ー国立がん研究センターらー


  • [公開日]2023.02.07
  • [最終更新日]2023.02.03

2月1日、国立がん研究センターは、日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group:JCOG)の肝胆膵グループが行った臨床試験の結果、胆道がんに対する根治手術後にS-1補助療法を行うことで生存期間を有意に延長することが明らかになったと発表。同日、記者会見を行った。

胆道がんは、早期発見が難しく、診断時にがんが周囲の臓器や血管まで広がっていることが多いため、手術不能な症例が多い。一方、手術が可能であったとしても手術後の再発率が高いことから、補助療法の確立が長年求められてきた。胆道がんの術後補助療法に関する臨床試験はこれまでも行われており、英国で行われた試験では、カペシタビンの有用性が報告されていたものの、統計学的な有意差を示すことはできていなかった。また、日本国内における標準治療は、術後経過観察であった。

今回のJCOG1202/ASCOT試験は、胆道がん切除術施行後の胆道がん患者(N=440人)に対する術後補助療法として、S-1 80mg/m2を4週間投与、2週間休薬の計6週間を1サイクルとして4サイクル行う群(S-1群、N=218人)と、これまでの標準治療である経過観察群(N=222人)に1:1で割付け、主要評価項目全生存期間副次評価項目無再発生存期間安全性などを比較検証した第3相試験。日本全国から38の医療機関が参加した。

(画像はリリースより)

同試験の結果、主要評価項目である3年全生存期間はS-1群で77.1%を示し、経過観察群の67.6%に対して統計学的に有意な延長を示した(HR:0.69、95%信頼区間:0.51-0.94、p=0.0080)。

(画像はリリースより)

一方の安全性として、S-1群におけるグレード3~4に有害事象は、好中球減少が14%、胆道感染が7%であった。

研究代表者である国立がん研究センター東病院肝胆膵外科の小西大氏は、記者会見にて「胆道がんの根治手術後のS-1補助療法が標準治療として確立し、エビデンスに基づいた治療の提供が可能になる」と述べるとともに、「日本のガイドラインにおいて、2024年ごろをめどにS-1補助療法が新たな標準治療として書き換えられる予定」と今後の展望を語った。

また、共同研究者である病院肝胆膵内科の池田公史氏は質疑応答で、S-1補助療法の保険適応に関する質問に対して、「S-1は胆道がんに対して保険適応になっているため、術後補助療法においても保険適応で受けることができ、今回の臨床試験中も保険適応の範囲内で使用した」と回答した。

なお、同試験の結果は、海外の医学誌「The Lancet」にて発表されている。

胆道がんとは
胆道がんは、胆道から生じたがんの総称であり、肝内胆管がん、肝外胆管がん、胆のうがん、乳頭部がんを含む。日本における罹患者数は年間約2万人と推計されている。

S-1とは
経口投与の抗がん剤の1つであり、テフガール・ギメラシル・オテラシルカリウムを有効成分とする国内で開発された薬剤。胃がん、大腸がん、膵がんなどの根治手術後の補助療法としての有効性が確立されている。

参照元:
国立がん研究センター プレスリリース

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