2023年1月31日、第一三共株式会社は、治療標的となる遺伝子変異を有さない非扁平上皮非小細胞肺がんを対象に、一次治療としての抗TROP2抗体薬物複合薬(ADC)ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd /DS-1062)+キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ、以下キイトルーダ)±化学療法の有効性と安全性を比較検証する第3相TROPION-Lung07試験を開始したと発表した。
肺がんは、世界で2番目に多いがん腫であり、非小細胞肺がんは、肺がん全体の80~85%を占める。近年登場した免疫チェックポイント阻害薬は、治療標的となる遺伝子変異を有さない非小細胞肺がんに対する治療薬として選択されるが、腫瘍の大半は初期治療に反応せず病勢が進行するため、新たな治療の選択肢が必要とされている。
複数の固形がんで高発現が確認されている細胞表面タンパク質であるTROP2(Trophoblast surface antigen 2)は、非小細胞肺がんでも発現しており、がんの進行や生存率の低下に関係しているといわれている。現在、非小細胞肺がん患者を対象に承認されているTROP2を標的とした治療法は存在しない。
TROPION-Lung07試験は、治療標的となる遺伝子変異を有さない、PD-L1発現率が50%未満の再発/進行性非扁平上皮非小細胞肺がん患者(N=975名予定)に対して、ダトポタマブ デルクステカン+キイトルーダ+化学療法を投与する群とダトポタマブ デルクステカン+キイトルーダ併用療法を実施する群に振り分け、主要評価項目として、無増悪生存期間と全生存期間、副次評価項目として客観奏効率や奏効期間、安全性などを評価するグローバル臨床試験である。
第一三共は、リリースにて「当社は、Actionable遺伝子変異のない非小細胞肺がん治療に新たな選択肢を提供できるよう、本剤の 開発を加速させてまいります。」と述べている。
ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd/DS-1062)とは ダトポタマブ デルクステカンは、がん細胞の細胞膜上に高発現する抗原であるTROP2に特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体とトポイソメラーゼⅠ阻害剤(DXd)を結合させた薬剤である。薬物をがん細胞内に直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えるよう設計されている。
参照元:第一三共株式会社 プレスリリース