2023年1月12日、医学誌『The Lancet Oncology』にて自家造血幹細胞移植後の新規多発性骨髄腫患者に対する維持療法としてのプロテアソーム阻害薬であるカルフィルゾミブ+免疫調整薬(iMids)であるレナリドミド+デキサメタゾン併用療法、レナリドミド単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のATLAS試験(NCT02659293)の中間解析の結果がPoznan University of Medical SciencesのDominik Dytfeld氏らにより公表された。
ATLAS試験とは、自家造血幹細胞移植後の新規多発性骨髄腫患者(N=180人)に対して28日を1サイクルとして1サイクル目の1、2日目にカルフィルゾミブ20mg/m2(以降は1サイクル目の8、9、15、16日目に36mg/m2、2~4サイクル目は1、2、8、9、15、16日目に36mg/m2、5~36サイクル目は1、2、15、16日目に36mg/m2)+1~21日目にレナリドミド25mg/日+1、8、15、22日目にデキサメタゾン20mg併用療法を病勢進行または予期せぬ有害事象(AE)が発現するまで実施する群(N=93人)、もしくは1~3サイクル目はレナリドミド10mg/日(4サイクル目以降は15mg/日)単剤療法を病勢進行または予期せぬ有害事象(AE)が発現するまで実施する群(N=87人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全患者群における無増悪生存期間(PFS)、その他評価項目として安全性などを比較検証した多施設共同オープンラベルランダム化の第3相試験である。
本試験に登録された患者の年齢中央値は59歳(49.0~63.0歳)、性別は男性が53%(N=96人)、女性が47%(N=84人)。以上の背景を有する患者に対する本試験のフォローアップ期間中央値33.8ヶ月時点における結果は下記の通りである。
主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はカルフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン併用群の59.1ヶ月(95%信頼区間:54.8ヶ月-未到達)に対してレナリドミド単剤群で41.4ヶ月(95%信頼区間:33.2-65.4ヶ月)と、カルフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを49%(HR:0.51、95%信頼区間:0.31-0.86、P=0.012)減少した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3もしくは4の有害事象(AE)は、好中球減少症がカルフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン併用群の48%(N=44人)に対してレナリドミド単剤群で60%(N=52人)、血小板減少症が13%(N=12人)対7%(N=6人)、下気道感染症が8%(N=7人)対1%(N=1人)であった。重篤な有害事象(SAE)発症率は、カルフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン併用群の30%(N=28人)に対してレナリドミド単剤群で22%(N=19人)、治療関連有害事象(TRAE)による死亡はカルフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン併用群で1人確認され、その内容は重症肺炎による呼吸不全であった。
以上のATLAS試験の結果よりDominik Dytfeld氏ら「自家造血幹細胞移植後の新規多発性骨髄腫患者に対する維持療法としてのプロテアソーム阻害薬カルフィルゾミブ+免疫調整薬レナリドミド+デキサメタゾン併用療法は、レナリドミド単剤群に比べて無増悪生存期間(PFS)を改善し、この治療法を検討する支持をする結果となりました」と結論を述べている。
Carfilzomib, lenalidomide, and dexamethasone or lenalidomide alone as maintenance therapy after autologous stem-cell transplantation in patients with multiple myeloma (ATLAS): interim analysis of a randomised, open-label, phase 3 trial(Lancet Oncol. 2023 Jan 12;S1470-2045(22)00738-0. doi: 10.1016/S1470-2045(22)00738-0.)