KRASG12C遺伝子変異陽性転移性大腸がんに対するKRAS阻害薬アダグラシブ±抗EGFR抗体薬セツキシマブ、抗腫瘍効果を示すThe New England Journal of Medicineより


  • [公開日]2023.01.27
  • [最終更新日]2023.01.13
この記事の3つのポイント
・複数治療歴のあるKRASG12C遺伝子変異陽性転移性大腸がん患者が対象の第1/2相試験
・KRAS阻害薬アダグラシブ±抗EGFR抗体セツキシマブ併用療法の有効性安全性を検証
・客観的奏効率はアダグラシブ単剤で19%、セツキシマブとの併用で46%を示す

2022年12月21日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて複数治療歴のあるKRASG12C遺伝子変異陽性転移性大腸がん患者に対するKRAS阻害薬であるアダグラシブ(MRTX1133)±抗EGFRモノクローナル抗体であるセツキシマブ併用療法の有効性、安全性を検証した第1/2相のKRYSTAL-1試験(NCT03785249)の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのRona Yaeger氏らにより公表された。

KRYSTAL-1試験は、複数治療歴のあるKRASG12C遺伝子変異陽性転移性大腸がん患者(N=76人)を対象に1日2回アダグラシブ(MRTX1133)600mg単剤療法(N=44人)、もしくは1日2回アダグラシブ(MRTX1133)600mg+1週に1回セツキシマブ250mg/m2(もしくは2週に1回セツキシマブ500mg/m2)併用療法(N=32人)実施し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR完全奏効率もしくは部分奏効率として定義)、安全性を検証したオープンラベルランダム化の第1/2相試験である。

本試験が開始された背景として、経口低分子阻害薬であるアダグラシブ(MRTX1133)はKRASG12C遺伝子変異陽性固形がんに対して良好な抗腫瘍効果を示している。また、前臨床試験では、アダグラシブ(MRTX1133)、抗EGFRモノクローナル抗体との併用により相乗効果も確認された。以上の背景より複数治療歴のあるKRASG12C遺伝子変異陽性転移性大腸がん患者に対するKRAS阻害薬であるアダグラシブ(MRTX1133)単剤療法、アダグラシブ(MRTX1133)+セツキシマブ併用療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。

本試験のフォローアップ期間中央値20.1ヶ月、17.5ヶ月時点における結果は下記の通りである。アダグラシブ(MRTX1133)単剤群の客観的奏効率(ORR)は19%(95%信頼区間:8-33%)、奏効持続期間(DOR)中央値は4.3ヶ月(95%信頼区間:2.3-8.3ヶ月)、無増悪生存期間PFS)中央値は5.6ヶ月(95%信頼区間:4.1-8.3ヶ月)を示した。

アダグラシブ(MRTX1133)+セツキシマブ併用群の客観的奏効率(ORR)は46%(95%信頼区間:28-66%)、奏効持続期間(DOR)中央値は7.6ヶ月(95%信頼区間:5.7ヶ月-未到達)、無増悪生存期間(PFS)中央値は6.9ヶ月(95%信頼区間:5.4-8.1ヶ月)を示した。

一方の安全性として、グレード3もしくは4の治療関連有害事象(TRAE)発症率はアダグラシブ(MRTX1133)単剤群が34%、アダグラシブ(MRTX1133)+セツキシマブ併用群が16%であった。なお、グレード5の有害事象(AE)は1人の患者でも確認されなかった。

以上の第1/2相のKRYSTAL-1試験の結果よりRona Yaeger氏らは「複数治療歴のあるKRASG12C遺伝子変異陽性転移性大腸がん患者に対するKRAS阻害薬アダグラシブ(MRTX1133)単剤療法、アダグラシブ(MRTX1133)+抗EGFRモノクローナル抗体セツキシマブ併用療法は良好な抗腫瘍効果を示しました。アダグラシブ(MRTX1133)+セツキシマブ併用群で奏効持続期間(DOR)中央値は6ヶ月以上を示しました」と結論を述べている。

Adagrasib with or without Cetuximab in Colorectal Cancer with Mutated KRAS G12C(N Engl J Med. 2022 Dec 21. doi: 10.1056/NEJMoa2212419.)

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