複数治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がんに対するダトポタマブ デルクステカン単剤療法、客観的奏効率32%を示す英アストラゼネカ社


  • [公開日]2023.01.25
  • [最終更新日]2023.01.05
この記事の3つのポイント
・複数治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がん患者が対象の第1相試験
・抗TROP2抗体薬物複合体ダトポタマブ デルクステカン単剤療法有効性安全性を検証
・客観的奏効率は32%を示し、内訳は完全奏効1人、部分奏効13人、病勢安定18人であった

英アストラゼネカ社は2022年12月9日、米国・サンアントニオで開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(2022 San Antonio Breast Cancer Symposium)にて複数治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対する抗TROP2抗体薬物複合体であるdatopotamab deruxtecan(ダトポタマブ デルクステカン;Dato-DXd)療法の有効性、安全性を検証した第1相のTROPION-PanTumor01試験(NCT03401385)のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)コーホートの結果を公表した。

TROPION-PanTumor01試験とは、複数治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者(N=44人)に対して3週を1サイクルとしてダトポタマブ デルクステカン6mg/kgもしくは8mg/kg単剤を投与し、主要評価項目として安全性、副次評価項目として盲検化された独立中央委員会(BICR)判定による客観的奏効率(ORR)などを検証した第1相試験である。

本試験が開始された背景として、乳がん患者の約15%がトリプルネガティブ乳がんであり、他の乳がんタイプに比べてトリプルネガティブ乳がんは再発率が高率で、予後不良である。トリプルネガティブ乳がんの5年生存率OS)は12%ほどであり、新たに治療法の開発が必要である。以上の背景より、複数治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対する抗TROP2抗体薬物複合体であるダトポタマブ デルクステカン療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。前治療歴中央値は3レジメン(1~10レジメン)。前治療歴の種類はタキサン抗がん剤が93%、アントラサイクリン系抗がん剤が75%、カペシタビンが61%、白金系化学療法が52%、免疫療法が45%、トポイソメラーゼI阻害剤ベースの抗体薬物複合体(ADC)が32%、PARP阻害剤が18%である。

本試験の結果、全患者群における盲検化された独立中央委員会(BICR)判定による客観的奏効率(ORR)は32%を示し、奏効の内訳は完全奏効(CR)が1人、部分奏効(PR)が13人、病勢安定(SD)が18人であった。サブグループ解析の結果、トポイソメラーゼI阻害剤ベースの抗体薬物複合体(ADC)による治療を受けてない患者(N=27人)における客観的奏効率(ORR)は44%を示し、奏効の内訳は完全奏効(CR)が1人、部分奏効(PR)が11人、病勢安定(SD)が10人であった。

全患者群における無増悪生存期間PFS)中央値は4.4ヶ月(95%信頼区間:3.0-7.0ヶ月)、全生存期間(OS)中央値は13.5ヶ月(95%信頼区間:10.1-16.3ヶ月)を示した。サブグループ解析の結果、トポイソメラーゼI阻害剤ベースの抗体薬物複合体(ADC)による治療を受けてない患者における無増悪生存期間(PFS)中央値は7.3ヶ月(95%信頼区間:3.0-18.0ヶ月)、全生存期間(OS)中央値は14.3ヶ月(95%信頼区間:10.5ヶ月-未到達)を示した。病勢コントロール率DCR)は全患者群で80%、サブグループ解析群で81%をそれぞれ示した。

一方の安全性として、ダトポタマブ デルクステカンの安全性プロファイルは既存の臨床試験で確認されている内容と一致していた。グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率は口内炎が11%、リンパ球数減少が7%、疲労が7%、嘔吐が5%、貧血が2%、好中球数減少が2%、悪心が2%であった。重篤な有害事象(SAE)発症率は20.5%、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止は1人の患者で確認され、その内容はグレード1の肺炎であった。発熱性好中球減少症、グレード3以上の下痢は1人の患者でも確認されなかった。

以上のTROPION-PanTumor01試験のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)コーホートの結果より本試験の代表医師であるMass General Cancer Center and Associate Professor of MedicineのAditya Bardia氏は「トリプルネガティブ乳がんは乳がんの中で腫瘍進行が最もアグレッシブなタイプであり、全生存期間(OS)中央値は18ヶ月未満です。複数治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者さんに対する抗TROP2抗体薬物複合体であるダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)療法は持続的で良好な抗腫瘍効果を示しました」と結論を述べている。

Datopotamab deruxtecan showed promising responses as monotherapy and in combination with Imfinzi in patients with metastatic triple-negative breast cancer in two early trials(AstraZeneca PressReleases)

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