2023年1月23日、ジェイファーマ株式会社は、進行性胆道がんを対象に、L-タイプアミノ酸トランスポーター1(LAT1)を標的とした新規低分子化合物であるナンブランラト(開発コード:JPH203)の有効性と安全性を評価した国内第2相試験の結果を発表した。
胆道がんは、肝内胆管がん、肝外胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんなど胆道に発生するがんの総称。胆道がんは無症状で経過することが多く、検診など見つかるほかは、黄疸や右側腹部の痛み、体重減少などの症状が表れてから発見されるため、ステージIV期の患者が45.1%と半数近くを占める。また、診断時の年齢は65歳以上が88%、75歳以上が60%と高齢者に多い。
胆道がんの根治的治療法は外科的アプローチによる病巣の切除であるが、手術適応とならない切除不能の胆道がんでは、化学療法が選択される。しかしながら、現在日本において確立された2次治療が存在しない。
同試験は、前治療歴のある難治性胆道がん患者(N=106人)に対して、ナンブランラト単剤療法を実施する群(N=70人)とプラセボを投与する群(N=36人)に振り分け、主要評価項目を盲検下独立中央判定(BICR)によって評価された無増悪生存期間(PFS)としたランダム化二重盲検第2相試験。なお、日本国内では14の施設が参加した。
同試験に登録された胆道がんのサブタイプは、肝内胆管がん、肝外胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんであり、標準的な化学療法および他の治験薬2剤以上に不耐性となった患者が83%を占める。
同試験の結果、主要評価項目であるBICRによる無増悪生存期間(PFS)は、ナンブランラト群がプラセボ群に対して統計学的有意に改善を示した(HR:0.557、95%信頼区間:0.3435-0.9029、p=0.016)。病勢コントロール率(DCR)は、ナンブランラト群が4つのサブタイプで約25%を示したのに対し、プラセボ群は11.4%であった。以上より、前治療歴のある進行性/難治性胆道がんに対するナンブランラト単剤療法の臨床的抗腫瘍効果が認められた。
また、ナンブランラトの抗腫瘍効果は、性別、年齢、前治療歴、転移の臓器、サブタイプのいずれにおいても一貫して確認された。
一方の安全性として、薬物有害反応はナンブランラト群の41.4%に対してプラセボ群で57.1%であり、グレード3以上の有害事象はナンブランラト群で30.0%、プラセボ群で22.9%を示した。投与の減量、中止、死亡は1人の患者でも確認されなかった。
なお、同試験の結果は、米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO GI 2023)にて発表された。同シンポジウムの発表者である神奈川県立がんセンター総長の古瀬純司氏は、ASCO広報のインタビューに対して「胆道がんに対する2次治療以降の化学療法は非常に限られています。ナンブランラトは、標準治療に抵抗性を示す胆道がん患者の生存率向上に貢献することが期待されます」と述べている。
LAT1(遺伝子コード:SLC7A5)とは アミノ酸を輸送するアミノ酸トランスポーターの1種であるLAT1は、がん化した細胞の表面に多く発現し、増殖に必要なアミノ酸を取り込むと報告されている。また、発現量の多さと悪性度には相関があるといわれている。LAT1はがん細胞だけでなく、関節リウマチ、1型糖尿病、多発性硬化症などの自己免疫性の疾患において重要な役割を果たすと報告されている。
ナンブランラトとは ナンブランラトは、LAT1を標的としてジェイファーマが創作した新規の低分子化合物である。医薬品の承認を取得すれば、ファーストインクラスの新薬となる。また、ナンブランラトは、2022年4月に米国食品医薬品局(FDA)よりオーファンドラッグの指定を受けている。
参照元:ジェイファーマ株式会社 プレスリリース