治療歴のある再発/難治性慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫に対するBTK阻害薬ピルトブルチニブ、客観的奏効率74%を示すASH 2022


  • [公開日]2022.12.23
  • [最終更新日]2022.12.23
この記事の3つのポイント
・治療歴のある再発/難治性CLL/SLL患者が対象の第1/2相試験
・ピルトブルチニブ単剤療法有効性安全性を検証
・客観的奏効率は74%を示し、サブグループごとの解析においても良好な抗腫瘍効果を認めた

2022年12月10日~13日、米国ルイジアナ州・ニューオーリンズで開催されたASH 2022 Annual Meetingにて、治療歴のある再発難治性慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)患者を対象に非共有結合型BTK阻害薬であるピルトブルチニブ単剤療法の有効性、安全性を検証した第1/2相のBRUIN試験(NCT03740529)のアップデート解析の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのAnthony R. Mato氏らにより公表された。

BRUIN試験は、再発/難治性慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むB細胞性悪性腫瘍患者(N=725人)に対してピルトブルチニブ単剤を投与し、重要な評価項目として客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間PFS)、安全性を検証した第1/2相試験である。

本試験が開始された背景として、BTK阻害薬はリンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療へ変革を与えた治療薬である。高い臨床効果を示すものの、共有結合型BTK阻害薬では治療抵抗性、難治性を示す場合もある。以上の背景より、より高い選択性を持つ非共有結合型BTK阻害薬であるピルトブルチニブの有用性を検証する目的で本試験が開始された。

本試験に登録された276人の再発/難治性慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)の患者背景は下記の通りである。年齡中央値は69歳(36~88歳)。前治療歴中央値は3レジメン(1~11レジメン)。前治療の種類は抗CD20モノクローナル抗体が89%、化学療法が80%、BCL2阻害薬が44%、PI3K阻害薬が24%、CAR-T療法が6%、造血幹細胞移植が2%。染色体異常リスクはdel(17p)が29%、変異型TP53が40%、非変異型IGHVが85%。75%の患者が前治療のBTK阻害薬による治療を病勢進行のため中止している。

本試験の結果、全患者群における客観的奏効率(ORR)は74%(95%信頼区間:68-79%)、無増悪生存期間(PFS)中央値は19.4ヶ月(95%信頼区間:16.6-22.3ヶ月)、12ヶ月無増悪生存率(PFS)は68%(95%信頼区間:62-74%)、18ヶ月無増悪生存率(PFS)は54%(95%信頼区間:46-61%)を示した。

年齡別(75歳以上群、75歳未満群)の客観的奏効率(ORR)は75歳以上の71%(95%信頼区間:58-83%、N=56人)に対して75歳未満で74%(95%信頼区間:68-80%、N=217人)、無増悪生存期間(PFS)中央値は75歳以上の20.1ヶ月(95%信頼区間:15.7ヶ月-未到達)に対して75歳未満で18.7ヶ月(95%信頼区間:16.6ヶ月-未到達)、12ヶ月無増悪生存率(PFS)は75歳以上の78%(95%信頼区間:63-87%)に対して75歳未満で66%(95%信頼区間:58-73%)、18ヶ月無増悪生存率(PFS)は75歳以上の62%(95%信頼区間:44-75%)に対して75歳未満で52%(95%信頼区間:43-60%)を示した。

BTK阻害薬/BCL2阻害薬歴別(治療歴あり群、治療歴なし群)の客観的奏効率(ORR)は治療歴ありの73%(95%信頼区間:64-81%、N=119人)に対して治療歴なしで74%(95%信頼区間:66-81%、N=154人)、無増悪生存期間(PFS)中央値は治療歴ありの14.1ヶ月(95%信頼区間:11.1-18.7ヶ月)に対して治療歴なしで22.1ヶ月(95%信頼区間:18.4ヶ月-未到達)、12ヶ月無増悪生存率(PFS)は治療歴ありの58%(95%信頼区間:47-68%)に対して治療歴なしで75%(95%信頼区間:67-82%)、18ヶ月無増悪生存率(PFS)は治療歴ありの42%(95%信頼区間:29-55%)に対して治療歴なしで62%(95%信頼区間:52-70%)を示した。

染色体異常リスクの有無別(リスクあり群、リスクなし群)の客観的奏効率(ORR)はリスクありの80%(95%信頼区間:70-87%、N=98人)に対してリスクなしで67%(95%信頼区間:58-76%、N=107人)、無増悪生存期間(PFS)中央値はリスクありの16.6ヶ月(95%信頼区間:13.8-22.1ヶ月)に対してリスクなしで19.4ヶ月(95%信頼区間:14.1ヶ月-未到達)、12ヶ月無増悪生存率(PFS)はリスクありの69%(95%信頼区間:58-78%)に対してリスクなしで66%(95%信頼区間:55-75%)、18ヶ月無増悪生存率(PFS)はリスクありの47%(95%信頼区間:33-59%)に対してリスクなしで58%(95%信頼区間:46-68%)を示した。

最も多くの患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は疲労が26%(N=191人)、下痢が22%(N=160人)、挫傷が19%(N=138人)であった。また、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は好中球減少症の20%(N=143人)であった。その他、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)高血圧が3%、出血が2%、心房細動/粗動が1%、低頻度で確認されている。

以上のBRUIN試験のアップデート解析の結果よりAnthony R. Mato氏らは「治療歴のある再発/難治性慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)患者に対する非共有結合型BTK阻害薬ピルトブルチニブ単剤療法は、年齡、前治療歴、染色体異常等の患者ステータスに関係なく、良好で持続的な抗腫瘍効果を示しました」と結論を述べている。

Efficacy of Pirtobrutinib in Covalent BTK-Inhibitor Pre-Treated Relapsed / Refractory CLL/SLL: Additional Patients and Extended Follow-up from the Phase 1/2 BRUIN Study(64th ASH Annual Meeting & Exposition,Abstract 961)

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