2022年12月10日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて複数治療歴のある再発/難治性多発性骨髄腫患者に対する抗Gタンパク質共役受容体クラス5メンバーD(GPRC5D)/CD3二重特異性抗体Talquetamab(タルクエタマブ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第1相試験(NCT03399799)の結果がIcahn School of Medicine at Mt SinaiのAjai Chari氏らにより公表された。
本試験は、複数治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者(N=232人)に対して1~2週を1サイクルとしてタルクエタマブ0.5~180µg/kg単剤を静脈投与する群(N=102人)、または1~2週を1サイクルとしてTalquetamab5.0~800µg/kg単剤を皮下注投与する群(N=130人)に振り分け、主要評価項目として第2相試験推奨用量(RP2D)、用量制限毒性(DLT)、第2相試験推奨用量(RP2D)における安全性、忍容性を検証した第1相試験である。
本試験が開始された背景として、Gタンパク質共役受容体クラス5メンバーD(GPRC5D)は、多発性骨髄腫(MM)の形質細胞に発現している。タルクエタマブはGタンパク質共役受容体クラス5メンバーD(GPRC5D)、CD3を標的にする二重特異性抗体であるため、多発性骨髄腫細胞を殺傷するT細胞を誘導する機序を持ち、再発/難治性多発性骨髄腫の治療薬になり得る可能性がある。以上の背景より、本試験が開始された。
本試験の結果、主要評価項目である第2相試験推奨用量(RP2D)は1週を1サイクルとしてタルクエタマブ405µg/kg単剤を皮下注投与、もしくは隔週でタルクエタマブ800µg/kg単剤を皮下注投与として推奨された。最も多くの患者で確認された全グレードの有害事象(AE)は、サイトカイン放出症候群(CRS)がタルクエタマブ405µg/kg単剤群の77%に対してタルクエタマブ800µg/kg単剤群で80%、皮膚障害が67%に対して70%、味覚障害が63%に対して57%であった。なお、用量制限毒性(DLT)としては、タルクエタマブ800µg/kg単剤群でグレード3の皮膚障害が1人の患者で報告されている。
フォローアップ期間中央値タルクエタマブ405µg/kg単剤群11.7ヶ月、タルクエタマブ800µg/kg単剤群4.2ヶ月時点における結果、奏効率(RR)は、タルクエタマブ405µg/kg単剤群の70%(95%信頼区間:51-85%)に対してタルクエタマブ800µg/kg単剤群で64%(95%信頼区間:48-78%)を示した。奏効持続期間(DOR)中央値は、タルクエタマブ405µg/kg単剤群の10.2ヶ月に対してタルクエタマブ800µg/kg単剤群で7.8ヶ月をそれぞれ示した。
以上の第1相試験の結果よりAjai Chari氏らは「複数治療歴のある再発/難治性多発性骨髄腫患者に対する抗Gタンパク質共役受容体クラス5メンバーD(GPRC5D)/CD3二重特異性抗体タルクエタマブ単剤療法は、臨床効果のある奏効を示し、有害事象(AE)として多くの患者で確認されたサイトカイン放出症候群(CRS)、皮膚関連事象、味覚異常は低グレードの内容でした」と結論を述べている。
Talquetamab, a T-Cell-Redirecting GPRC5D Bispecific Antibody for Multiple Myeloma(N Engl J Med. 2022 Dec 10. doi: 10.1056/NEJMoa2204591.)