10月24日、英アストラゼネカ社は、米国において切除不能な肝細胞がん(HCC)に対する抗PD-L1抗体薬イミフィンジ(一般的:デュルバルマブ、以下イミフィンジ)と抗CTLA-4抗体薬Imjudo(一般名:トレメリムマブ)の併用療法が承認されたと発表した。
HCCは肝がんの約75%を占める最も一般的な組織型である。患者の半数以上が診断時に進行しており、HCC全患者の80~90%は肝硬変を併発していると報告されている。さらに、HCCは治療選択肢が限られているため、免疫系へのアプローチも含め、アンメットメディカルニーズが存在している。
今回の承認は、第3相HIMALAYA試験の結果に基づくもの。同試験では、全身療法による治療歴がなく局所療法の適応とならない切除不能な進行HCC患者(N=1324人)を対象に、イミフィンジ1500mg単剤を投与する群(単剤療法群)、もしくはイミフィンジ1500mg+初回投与時にトレメリムマブ300mgを投与した後、4週を1サイクルとしてイミフィンジを継続投与する群(併用療法群)、標準治療薬であるソラフェニブを投与する群(ソラフェニブ群)に分け、有効性と安全性を比較検証した。
なお、イミフィンジ+トレメリムマブ併用療法の新規用量および投与スケジュールは、STRIDEレジメン(Single Tremelimumab Regular Interval Durvalumab)と呼ばれる。
同試験の結果、併用療法群はソラフェニブ群に対して、死亡リスクが22%低下(HR:0.78、95%信頼区間:0.66-0.92、p=0.0035)。また、3年生存率は併用療法群の推定31%に対し、ソラフェニブ群では20%であった。
アストラゼネカ社のエグゼクティブバイスプレジデント兼オンコロジービジネスユニット責任者であるDave Fredrickson氏は「トレメリムマブが規制当局の承認を取得したことにより、米国の切除不能な肝がんの患者さんは、CTLA-4阻害剤の可能性を活かす、新たな併用療法となるPD-L1阻害薬との2剤免疫療法レジメンで治療を受け、がんに対する免疫反応を強めることができます」と述べている。
なお、日本国内において、イミフィンジ+トレメリムマブ併用療法は薬事申請の審査中であり、未承認。
イミフィンジ(デュルバルマブ)とは イミフィンジは抗PD-L1モノクローナル抗体であり、がん細胞が発現しているPD-L1に結合することで、PD-1やCD80の相互作用を阻害し、がんが免疫からの攻撃にブレーキをかける機能を抑制し、抗腫瘍効果をもたらす。
トレメリムマブとは トレメリムマブは細胞障害性T-リンパ球抗原4(CTLA-4)モノクローナル抗体であり、CTLA-4の働きを阻害することでT細胞の働きを活性化させ、がんに対する免疫反応を増大させる。トレメリムマブは、イミフィンジとの併用療法で局所HCC、小細胞肺がん、膀胱がんなどで有効性と安全性を検討されている。
参照元:アストラゼネカ株式会社 ニュースルーム